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夜明けの星 1-36(夏樹)
――ふて寝からの本気寝……になっていたらしい。
「おやまぁ……何やってんだいこの子たちは――」
「……ん~――」
「凜坊、晩飯だよっ!」
「っ!?……愛ちゃん?何で俺の頭潰そうとしてんの?」
愛華の声に目を覚ました夏樹は、半分寝惚けて振り向こうとした。
が、なぜかいきなり愛華に頭を掴まれてベッドに押さえつけられてしまった。
「久々に帰って来た息子を目覚めて一秒で永遠の眠りにつかせようとするのは止めて!?」
「何言ってんだい、凜坊が動いたら坊やを潰しちまうだろう!?転がるならそっちに転がんな!」
「坊や?……あぁ、雪夜のことか」
言われて見ると背中が温かい。
普段眠る時は腕の中にいるので、雪夜が背中側にいるのは新鮮だ。
愛華に言われた通りに反対側に転がろうとしたのだが、うつ伏せになった夏樹の背中に温もりがそのままついてきた。
あれ、これどういう状態?
「ふふ、まるでサルの親子みたいだねぇ」
夏樹の背中にしがみついている雪夜を見て、愛華が笑いながら引きはがしてくれた。
「ありがと。雪夜も寝ちゃったのか」
「可愛らしいねぇ、こりゃあんたが手放せないわけだ」
「愛ちゃんにはあげませんよ!?」
爆睡している雪夜を愛華から慌てて抱き取った。
「いいじゃないか。私だってたまにはこういう可愛い子に癒されたいよ。私の周りは可愛くないくそガキばっかりだからねぇ」
「そのくそガキの相手すんのが愉しいくせに」
「まぁね。それにしても……起きないねぇ」
「う~ん、家でもないのに雪夜がこんなに爆睡するのは珍しいな……」
夏樹と愛華が騒いでいるにも関わらず、雪夜は気持ち良さそうに眠っていた。
あ~……もしかして、この5日間ちゃんと眠れてなかったのかな……
「体調でも悪いのかい?」
「いや、きっと寝不足かな。俺がいないとあんまり眠れないから」
「わかってんなら傍に置いておけば良かったのに。あんたも変な所で頑固だよねぇ」
「だって、調べに出てる間は家に一人になっちゃうし……」
「守り方は一つじゃないだろう?もっと頭をお使い。それより、どうする?もう少し寝かせておいてやるかい?」
「でもここに一人で置いておくのもな~……」
「メモでも置いておけばいいんじゃないかい?」
「……多分、起きた時に俺がいないと泣いちゃうから、今起こす」
「そうかい?じゃ、私は先に行ってるよ」
「は~い」
愛華が部屋から出て行くと、雪夜の頬を軽くペチペチ叩いた。
「雪夜~、起きて~!」
「ぅ~……」
「眠いだろうけど、ちょっと起きてご飯食べよ?後でまた寝ていいから」
「だっこ~」
雪夜が夏樹に抱きついて胸元に顔を擦りつけてきた。
「可愛っ……じゃなくて!……雪夜~、お願いだから起きて~!」
俺は別にいいんだけど……雪夜は初めて会う人もいるからな~……このまま抱っこしていって向こうで目が覚めたら絶対後で「何で起こしてくれなかったの!?」って雪夜に怒られそう……
「雪夜、起きないなら俺だけ食べに行くよ?一人になっちゃうけどいい?」
「ん~……やらぁ」
「起きる?」
「おきる~っ!」
まだ半分寝惚けてはいるが、一人という言葉に反応して一応目は開けた。
「自分で歩ける?」
「あるける」
「じゃ、行こうか」
目を擦りながら立ち上がったものの、そのまま夏樹の背中に抱きついてきた。
うん、めちゃくちゃ歩きづらい……
「雪夜さ~ん、歩くの無理?」
「あるいてる」
歩いてないし、そもそも自力で立ててもないよ?
爆睡した時の雪夜の寝起きの悪さはよく知っている。
寝惚けている時の雪夜は素直で可愛いので普段ならこのまま押し倒してるところだけど……残念ながらここは家じゃないし、早くいかないと今度は兄さん連中が様子を見に来そうだ。
だめだこりゃ……
「――もういいや。おいで」
夏樹は苦笑しながら、腰に回された雪夜の腕を掴んで前に引っ張り抱き上げた。
「ん~……なつきしゃん」
「なぁに?」
「なつきしゃんだ……」
「うん、そうだね」
「へへ……しゅき」
「んん゛……俺も好きだよ」
夏樹の顔を触りながらへにゃっと笑った雪夜に軽くキスをして、頭を撫でながら肩口に優しく押し付けた。
「そのまま寝てていいよ。向こうに着いたら嫌でも目が覚めるだろうからね――」
結局、寝惚けている雪夜を抱っこしたまま大広間に向かった――……
***
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