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夜明けの星 1-38(夏樹)

「雪坊、こっちにおいで」  代わる代わるやってきてはちょっかいを出してかえっていく兄さん連中に何とか雪夜が慣れてきた頃、愛華がおいでおいでと雪夜を手招きした。  雪夜が「どうしよう?」という顔で夏樹と愛華を交互に見る。 「行っておいで。怒らせなきゃただの優しいゴリ……おばさんだから大丈夫だよ」 「はい!」  にこっと笑って雪夜が愛華の元へ向かった。  夏樹も一緒に行こうかと思ったが、愛華から無言の圧力で「お前は来るな」と言われたので、仕方なく遠くから見守る。 「本当に可愛いなぁ、雪ちゃん、わしのことは瀬蔵パパって呼んでくれていいんだぞ?」 「はい!らいぞーパパ!」 「おい、瀬蔵。お前はパパって顔じゃねぇだろっ!雪ちゃん、こいつはおっさんでいいからね!あ、俺のことは詩織パパって呼んでね!」 「あ、はい!しおりパパ!」 「こいつらは二人ともおっさんでいいんだよ!それより、私のことは愛ちゃんって呼んでおくれね?あ、でも雪坊にならママって呼ばれてみたいねぇ」 「あ、えっと……あいちゃんママ?」 「ん~~~!!可愛いねぇ~!!」  あの人ら一体何やってんだ……?  夏樹の位置からでははっきりと声が聞こえないが、雪夜の両側から瀬蔵と詩織が必死にパパアピールをしているのはわかった。  その二人を軽くあしらって、愛華が雪夜を膝に乗せて頬ずりをした。  あぁ、愛ちゃん、力加減してよ!?雪夜の首がもげるっ!!  夏樹は愛華の怪力を身をもって知っているだけに、気が気ではなかった。 「雪坊にいいもの見せてあげよう。凜坊には内緒だよ」 「え、これって……夏樹さんですか!?」 「そうだよ――」  雪夜に名前を呼ばれた気がして首を伸ばして手元を見てみると、愛華がコッソリと雪夜に写真のようなものを見せていた。   「あ、ちょっと愛ちゃん!?雪夜に変なもの見せんなよ!?」 「浩二!そこで騒いでる坊やをこっちに寄せるんじゃないよっ!」 「合点承知!はいはい、ナツはこっちにおいで~。お兄さんたちが可愛がってあげようねぇ」  慌てて立ち上がろうとした夏樹は、浩二に後ろからガシッと羽交い締めにされてしまった。 「ちょ、浩二さん!?待って、愛ちゃんが何か見せてるっ!」 「だぁ~いじょうぶだって。どうせお前の子どもの頃の写真か愛ちゃんにボコボコにされて泣いてる写真だろ」 「何も大丈夫じゃねぇからっ!!それ一番見られたくないやつぅうううううう!!!」  いくらもがいても浩二はビクともせず、夏樹はそのまま浩二に引きずられて兄さん連中の酒盛りに連れて行かれた。 「はいはい、お前はこっち!ちょっとは俺らに付き合え!」 「ナツ~、お前何飲む?日本酒?」 「え?いや、俺酒は飲まないですよ!?」 「なんで?」 「だって、今日は雪夜がいるし……」 「あぁ、じゃあお前はウーロン茶ね。はい」 「いや、これウイスキーでしょ!!」 「色同じだからセーフだろ。細かいことは気にすんな」 「細かくないぃいい~~~!」  とは言え、何だかんだで世話になっているので兄さん連中の盃を断ることもできず、結局気がつけばガッツリ飲まされていた――…… ***

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