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夜明けの星 1.5-2(雪夜)
「雪夜はさ、その人達に会って怖くなかったのか?」
「え?俺?」
「うん」
「ん~……怖かったよ?夏樹さんがね、俺のことを恋人だって紹介してくれたんだけどね、俺、ゲイだから恋人ができると思ってなかったし、夏樹さんとも続くと思ってなかったし……だから相手の家族に会うこととか想像もしてなくて……どういう挨拶をすればいいのか全然わからなくて……それに、男となんかダメだって言われるかもとか思って――……なんかもうめちゃくちゃ緊張しちゃったよ~……」
「そっちかよっ!!」
「へ?」
佐々木に突っ込まれて、雪夜がポカンと佐々木を見た。
え、そっちってどっち!?
「あ~いや。うん、確かに親に挨拶すんのは緊張するよな。それはわかるけど、俺が言ってんのはそうじゃなくて、夏樹さんの実家って周りみんなヤクザなんだろ?そんな中で怖くなかったのかって話で……」
「あぁ、えっとねぇ……確かにヤクザさんがいっぱいだったんだけど、みんな礼儀正しいし、優しいし、怖くなかったよ!それに、らいぞーパパとあいちゃんママとしおりパパはヤクザさんだけど、夏樹さんや裕也さんたちはヤクザさんじゃないって言ってたし!」
「う~ん……まぁ、雪夜が脅されたり嫌な思いしたりしてないならいいけど。でも、夏樹さんはヤクザじゃないって言っても、ヤクザと関わりがあるってことだろ?これからどうすんだ?」
「え、何が?」
「だから……夏樹さんとこのまま……付き合っていくのか?」
佐々木が言いづらそうにしながらも雪夜を真っ直ぐ覗き込んだ。
佐々木の言いたいことはわかる。っていうか……
「――……ふふ……あははっ!」
「え、どうした?雪夜」
「いや、笑ってごめん。ふふ……だって、佐々木が夏樹さんと同じこと聞いてくるから、何だかおかしくて」
「夏樹さんが?」
佐々木が意外そうな顔をした。
「うん。えっとね……夏樹さんも俺のことが怖くない?って聞いてきたの。一緒にいたら、もしかしたら何か怖いことに巻き込んじゃうかもしれないし……って。でもね、夏樹さんは夏樹さんだよ?俺はヤクザさんのことはよく知らないけど、少なくとも白季組の人たちは無闇に人を傷つけるようなことはしないと思う。今の夏樹さんがあるのはあの人たちのおかげだし、俺が好きになったのはあの環境で、あの素敵な人たちに囲まれて育ってきた夏樹さんなんだよね。だから、夏樹さんを好きな気持ちは何にも変わってないし、夏樹さんがいれば何も怖くないよ」
「そっか……そうだな。雪夜の言う通りだよな。変なこと聞いて悪かったな」
「ううん、二人とも心配してくれたんだよね、ありがとね!」
雪夜が笑いかけると、少し気まずそうにしていた佐々木がほっとした顔で笑った。
「だ~からそんなに心配することないって言っただろ~?あの夏樹さんがついてるんだし、もし危ない稼業の人だったとしても、夏樹さんなら雪ちゃんをちゃんと守るよ」
「わかってるけど……それでも心配だったんだから仕方ねぇだろっ!」
「そうだな。――ごめんな、雪ちゃん。夏樹さんが雪ちゃんのこと大事にしてんのはよく知ってるし、女たらしなだけじゃなくてわりといい奴だってのも知ってるけどさ、やっぱり俺らは友達として雪ちゃんが大事だから雪ちゃんが悲しむような姿は見たくないんだよね。だから、お節介だってわかってても一応聞いておきたかったんだよ。な、翠?」
相川が苦笑しながら、ちょっとむくれていた佐々木の頭をよしよしと撫でた。
「うん、わかってるよ!ありがとう、二人とも大好きっ!」
雪夜は二人の気持ちが嬉しくて、ぎゅっと佐々木に抱き着いた。
「え、ちょっと雪ちゃん?俺には!?俺結構いいこと言ったつもりなんだけどっ!?」
「相川うるさいっ!今いいところだから邪魔すんな」
「相川邪魔ぁ~!」
「うそぉ……!?ちょっと二人とも酷くない!?俺も入れてよぉ~~!!」
佐々木と雪夜のクスクス笑いに混ざって、相川の情けない声が響いた――……
***
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