222 / 715
夜明けの星 1.5-3(雪夜)
「――それで、また相川が佐々木に叩かれちゃって――……」
「へぇ~……」
「……夏樹さん?」
「ん?」
晩御飯を食べながら、昼間の佐々木たちとのやり取りを夏樹に話した。
だが、普段はにこにこしながら話を聞いてくれるのに、なぜか今日は夏樹の機嫌が悪かった。
あれ?……あっ!!
「……あ、あの……夏樹さんのお家のこと勝手に喋っちゃってごめんなさいっ!でもあの、佐々木たちは裕也さんが迎えに来てくれたこと知ってるし、俺が夏樹さんのお家にいたのを知ってたので……その……」
うわああああ!!俺何やってんの!?
夏樹さんの個人情報じゃんかぁああああ!!何勝手に喋ってんだよぉ~!
佐々木はあの時電話かけてきたから俺が夏樹さんの家にいたこと知ってるし、何ていうか二人は保護者みたいな感じだから何でも喋っちゃうクセが……って、でもそれはただの言い訳だよね。
家族のこととかは夏樹さんに確認もせずに勝手に喋っていい内容じゃないし!
どうしよう……俺最低だ……
だから夏樹さんも怒って――……
「あぁ。いや、あいつらに話すのは別にいいよ?まぁ、あいつらも軽く巻き込まれてたんだから白川らの話とかもしておかないと、あの後どうなったのか気になってモヤモヤしてただろうし、白川らの話をしたらどうしても俺と白季組の繋がりについても話さないと説明つかなくなるしね」
顔面蒼白の雪夜に対して、夏樹が軽く返事をした。
「でも……夏樹さん怒ってるんじゃ……?」
「え?怒ってないよ?あぁ……ごめん、違うよ。――これはちょっと、佐々木らに嫉妬しただけで……」
夏樹が気まずそうにスッと視線を逸らして口元を手の甲で押さえ語尾を弱めた。
「え、しっとですか?しっとって……」
ん?嫉妬のこと?え、夏樹さんが!?
「あ~もう、そんな考え込まなくていいからっ!!で、続きは?」
夏樹が、何に嫉妬しているのかわからず考え込んでいる雪夜の目の前で手を振った。
照れ隠しなのか、話題を変えようと続きを促してくる。
だけど……
「夏樹さんが佐々木に嫉妬?」
「いや、それは忘れていいからっ!!っていうか、忘れて!!」
「怒ってるんじゃなくて?」
「だからなんで俺が怒るの?雪夜は別に怒られるようなことしてないでしょ?」
「でも俺勝手に――……」
十分怒られるようなことでしょ……?
俯いた雪夜を見て、夏樹が小さくため息をついて席を立った。
ほら……やっぱり怒ってる……
いや、そりゃ怒って当然だし……
どうしよう……って、謝るしかないけど……許して貰えなかったら?
もぉ~~!!バカにも程があるっ!
何で勝手に話しちゃったんだろう……
夏樹さんは別にいいって言ったけど、それはあの二人だったからって話だし。
だってこれじゃあ俺、誰にでも他人の個人情報漏らすような奴と一緒だよね。
俺……夏樹さんの信用失うようなことしちゃったんだ……
そう思った瞬間、目の前が霞んで見えた。
泣くなっ!!
瞳から涙が零れないように奥歯を噛みしめて、堪える。
すぐに泣いてしまう自分、夏樹が怒るまで気づけなかった自分に吐き気がした――……
***
ともだちにシェアしよう!