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夜明けの星 2-4(雪夜)
「雪ちゃん、お待たせ~!」
雪夜を迎えに来るなり、ちょっと待ってて、と言って少し離れた場所で電話をかけていた裕也が、手を振りながら戻って来た。
「もういいんですか?」
「うん、もう大丈夫だよ!さてさて、どこか行きたいところある?」
「え?行きたいところ……ですか?」
行きたいところと言われても……むしろどこに行くんですか!?帰るんじゃないんですか!?
え、晩御飯どこに食べに行きたいかってこと?
うん、きっとそうだ!だって他にないもんね……!?
裕也と二人っきりなのは初めてなので、緊張する。
というか、夏樹や佐々木たち以外の人と二人っきりでどこかに出かけるという経験がないので、どうすればいいのかわからない……
「晩御飯食べに行くのでもいいし、ゲームセンターとかカラオケとか遊びに行くのでもいいし、それか……ん~……とりあえず、荷物置きに一回帰ろっか!」
「あ、はい!」
え、遊びに?裕也さんと!?いやいやいや、無理ですっ!!
嫌ってわけじゃなくて……その、ゲームセンターとかカラオケとかって……佐々木たちとしか行ったことないし、あ、ゲームセンターは入口だけなら夏樹さんとも行ったことあるけど……って、そういう問題じゃなくてっ!!
あ~でも夏樹さんが帰って来るまで家でただ一緒に待ってて貰うのは……裕也さんだって暇だし困るよね……
どうしたらいいんだろう……?
雪夜は頭の中でぐるぐる考えながら、案内されるままに裕也の車に乗り込んだ。
そうだ……何か会話!会話しないとっ!!え~と、こういう時の話題って……
「あの……裕也さんは何か好きな食べ物とかありますか?」
晩御飯のお店選びの参考にしようと思って聞いてみた。
「ん~?僕はね~……スッポンかな」
「え、すっぽ……ん?」
「知らない?スッポン」
「えっと、カメさん……ですよね?」
さすがに雪夜でもスッポンは知っているけれど、好きな食べ物でまさかその名前が出ると思わなかったので、困惑してしまった。
どうしよう……全然参考にならない……
「そうそう、カメさんだよ~。スッポンはね~、コラーゲンがたぁ~~っぷりだからね~、お肌がとぅるっとぅるになるんだよ~!まぁ、雪ちゃんはまだ若いから、そのままでもお肌ピチピチだけどね、僕みたいに40代にもなるとお肌ボロボロになるから、たまにスッポン食べないとダメなんだよね~。困ったもんだよまったく」
裕也があっけらかんとした顔で笑った。
「な、なるほど……」
裕也さんの10代のようなスベスベお肌の裏にはそういう秘密があったのか!
すごいな~……
雪夜は思わずマジマジと裕也の横顔を見つめてしまった。
でも……カメさん……
「美味しいんですか?カメさん」
「美味しいよ~?そっかぁ、雪ちゃんは食べたことないか」
「はい。だって確かカメさんって高いんですよね?」
「ん~……まぁピンキリだね。大きさにもよるし、養殖もされてるからね~。学生からすれば高いかもだけど、社会人になったら、全然手が出ないって程じゃないよ?」
「そうなんですか?――」
なんだかんだでスッポンの話で盛り上がって、気がついたら家に着いていた。
***
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