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夜明けの星 2-11(夏樹)
「ゆ~きや~~!!」
夏樹は浩二たちが出て行くなり、ベッドに腰かけていた雪夜に抱きついてそのまま押し倒した。
爆弾魔 は気になるけど、それよりも今は雪夜を補充しないと俺が無理!!頭が回らない!!
「ぉわっ!?……な、夏樹さん?どうしたんですか?」
「ん~~……ごめん、いろいろ限界。ちょっと食べさせて……」
「食べ――!?……んっ……っ」
戸惑う雪夜の口唇を貪るようなキスで塞いだ。
自分勝手で一方的なキスをしている自覚はあったが……止められなかった。
キスの先を自制するだけで精一杯だなんて……我ながらあまりの余裕のなさに笑えて来る。
***
「――んぅ、っんん゛!待っ……っケホッ……っ」
雪夜がひと際強く夏樹の肩を叩いて顔を背け咳き込んだ。
それを見てようやく我に返る。
「あ……ごめん!大丈夫!?」
「ケホッ……ん、らいじょーぶ……もっと……ちゅう、して?」
咳き込んで息切れしながらも雪夜が甘えた声でねだる。
……ちゅう!?
雪夜のデレに思わず真顔になった。
なけなしの理性が砕けそうになる。
もうこのまま抱いていいかな?
いやいやダメだろ!それは爆弾魔 をどうにかしてからだ!
あ~くっそ……なんで捕り逃がした俺えええ!!数時間前に戻りたいぃいい!!
「なつきさん?」
「ん?」
真顔で葛藤していると雪夜が手を伸ばして来たので、その手を取って手のひらに軽く口付ける。
「て……だけ?」
頬を上気させた雪夜がとろんとした目で夏樹の口唇を追って呟いた。
んん゛~……!
「あぁ~もぅ!」
「え?……っ」
くそ可愛っ!ホント食べちゃいたい……!
理性を保つのは大変だが、溜まりまくっていたストレスや疲労は雪夜のおかげで一気に癒された。
精神的に余裕が戻ったので今度は優しくなぞるようなキスをする。
「ん、っふぁ……っ」
「……っ……ねぇ雪夜、何かデザート食べた?」
ゆっくり口唇を離すと、雪夜の頬を撫でながらたずねた。
今日の雪夜はやけに甘ったるい味がする。
「ふぇ……?あっ!……あああの……さっきイチゴ……タルトを……」
慌てて口を押さえた雪夜の顔がイチゴ色に染まった。
「ふふ、なるほど。ごちそうさま」
イチゴタルト味だったのか……
思わず苦笑して雪夜の肩口に顔を埋めると、雪夜が少し驚いたように身動 ぎ夏樹の頭をガシッと押さえた。
予想外の動きに少し戸惑う。
「……えっと……雪夜?」
「あ、ご、ごめんなさい。ちょっとその……夏樹さんの髪がくすぐったくて……」
「くすぐったい?あ~……そうか、整髪料つけてるからだ。ごめんね」
今夜はパーティーなので普段と違うヘアセットをしている。
普段はあまり整髪料を使わないので、肌に触れると気になるのかもしれない。
すっかり忘れてた……まぁ、これ以上やると止まらなくなりそうだし、ちょうど止め時か。
夏樹が少し乱れた前髪をかきあげながら身体を起こすと雪夜も慌てて起き上がり、夏樹の服の袖を握った。
「違っ、いえ、全然大丈夫ですよ!?ただ、いつもよりもくすぐったくて、ちょっとびっくりしただけで……だからあの……」
ん?……もしかして続きしてってこと?
え、シていいの!?
……って、いやいや、だからちょっと落ち着けよ俺。
触るだけなら……と思ったが、雪夜は一回イクとしばらく動けないし、寝てしまうこともある。
浩二に呼び出された時に雪夜が寝ていると、この部屋にひとり置いていくことになる。
それだけは避けたい。
夏樹が自分の項 を揉みながら軽く息を吐き出すと、夏樹の服を握っていた雪夜の手が一瞬ビクッと強張った。
「……?」
さっきまで自分に余裕がなかったので気付かなかったけれど、落ち着いて見てみると何だか雪夜の様子がおかしい。(キスで蕩けてた時は別だけど)
……俺に怯えてる?ちょっと強引にキスしちゃったからかな?
でもそれなら続きは求めないか。
そういえば、さっき裕也さんが何か言ってたな……
ん~……?
「雪夜、おいで」
夏樹は雪夜を抱き寄せてヘッドボードにもたれかかった。
***
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