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夜明けの星 2-30(夏樹)
「んじゃ、俺帰るわ。またな~」
「隆 さん、気を付けて帰って下さいね」
「おぅ、また来るからな、雪ちゃん。次はもっといいもの食わしてやるよ」
「わーい!楽しみに待ってます!」
隆は雪夜から、出会った時の俺の無様な話をた~っぷりと聞いて散々笑った後、仕事があるので早々に帰って行った。
完全に兄さん連中の酒の肴にする気満々の隆の嬉しそうな顔……
俺の失言をカバーするためだったとは言え、よりにもよってその話題……
ははは、泣きたい……っ!
「さてと、雪ちゃんもだいぶここに慣れて来たし、俺もちょっと一回帰って来るか」
「え、斎 さんも帰るんですか?」
「うん、衣装替えしようと思ってな。そろそろこの服飽きた。ついでにお前が言ってたやつ取りに行ってやるよ」
「あ、ありがとうございます」
別荘には洗濯機も乾燥機もあるので、夏樹が毎日全員分の洗濯をしている。
冬物はかさばるので、着替えはあまり持って来ていない。
雪夜も夏樹も上下4着を組み合わせを変えてローテーションしている。
斎も似たようなものだったのだが、そのローテーションに飽きたと言うことだろう。
お洒落な斎らしい理由だ。
夏樹は外出する時はそれなりに気を付けるが、部屋着に関してはわりと無頓着なので、ローテーションでも全然かまわない。
「明日の昼過ぎには裕也が来るだろ。それまでは久しぶりに二人っきりにしてやる。でもまだ雪ちゃんに無理させんなよ?」
「わ、わかってますよっ!!」
「ほんとか~?お前ソッコー俺に助けを求めそうな顔してるぞ?」
「どんな顔ですかそれ……」
「こんな顔だよ」
斎が笑いながら、しかめっ面の夏樹の頬をペチペチと叩いた。
どういう意味なんだ……
「雪ちゃん、俺も用事があるから帰るよ。まぁ、またすぐに来るけどね」
「ええ!?斎さんも帰っちゃうんですか?」
「うん、淋しい?」
「淋しいです……」
雪夜が素直に答えた。
兄さん連中の中でも、斎は一番長く一緒にいたので一番懐いている。
斎にはカウンセリングも頼んでいるので、雪夜が斎に懐くのはいいことだ。
が、それにしても素直だなおい!俺にもそれくらい素直に言ってくれていいんですけど!?
「でも、明日の昼までナツと二人っきりだよ?」
「……え?」
「あれ、嫌だった?」
「いいいいやじゃないですっ!!」
「だよね?ん~……雪ちゃんに良い事教えてあげよう。ナツは雪ちゃんにいっぱい甘えられるのが一番嬉しいみたいだぞ?」
「へ?」
「ま、余計なこと考えなくていいから、思いっきり甘えとけってことだ」
斎さ~ん……声潜めても俺にはめちゃくちゃ聞こえてますけどぉおお!?
たぶん、わざと夏樹にも聞こえるように言っているのだろうが、雪夜の手前聞こえてないフリをして耳だけ集中していた。
ええ、そりゃもう!甘えてくれると嬉しいですよ!
不安定になってる時の雪夜の世話するのも嬉々としてやってますよ!
でも普段の雪夜はなかなか甘えて来ないどころか、いろいろ考えすぎて我慢しすぎちゃうんだよな~……
っていうか……あ~……そうか……
二人っきりの状態で甘えられると、今は俺ヤバいかもしれない……
ちょっと斎さん!無理させんなって言うなら、お願いだからあんまり雪夜をけしかけないでっ!?
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