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夜明けの星 2-34(雪夜)

 気がついたら、夕方まで夏樹と一緒に爆睡していた。    ん?なんで俺寝てたんだっけ……?  夏樹さんも寝てる……けど、まだ夜じゃないよね?  夏樹にもたれてボーっと考えていると、 「おはよ。もう大丈夫?」  寝惚け眼で夏樹が雪夜の顔をペタペタと触って来た。  大丈夫って何が? 「ん、熱は出てないね。今何時だ?」  熱?俺熱出てたんだっけ?  夏樹が携帯で時間を確認して軽く眉をあげた。 「4時間も寝てたのか。昼寝し過ぎたな。ん~~……雪夜、お粥なら食べられそう?」  夏樹は雪夜を胸に抱いたまま器用に伸びをして起き上がった。 「……ぁぃ」 「じゃぁ、作ってくるね」 「……ぁぃ……」 「雪夜はまだ寝てていいよ」 「ん……」  寝てていいと言われたので、そのまままた夏樹の胸にもたれかかった。 「お……っとぉ?雪夜さん、そこで寝るの?」 「ん~……」 「まぁ、斎さんもいないし、晩御飯はもうちょっと後でいいか……」  夏樹がふっと笑うと雪夜の頭に軽くキスをして背中をトントンと撫でた。  ん~~……?なんで……斎さんいないの……?  あぁ帰ったんだっけ……?  「――余計なこと考えなくていいから、ナツに思いっきり甘えとけ。あぁ、そうだ。せっかく二人っきりなんだから、たまには雪ちゃんから――」  急に斎が帰り際に言った言葉を思い出した。  そうだ……二人っきりになって、夏樹さんがテラスに行っちゃって…… 「なつきさん……っ!」 「ぅわっ!え、どうしたの?」  雪夜がパッと顔をあげたので、携帯を弄っていた夏樹が驚いて携帯を落とした。   「そうだ、俺が目を見ることができなくて、夏樹さん怒って、テラス行っちゃって……」 「はいはい、ストップ。雪夜、話がおかしくなってるよ?」 「……え?」 「俺は怒ってないよ?そりゃ目を合わせてくれないのはちょっと淋しいけど、それは前からだし、俺のことが好き過ぎて……とか言われて怒るわけないでしょ?まぁ、俺がテラスに行っちゃったのが悪いんだけど……あれは、二人っきりになるのが久しぶり過ぎて……ちょっと……ね……」  夏樹が雪夜から視線を外して、少し気まずそうな顔をした。  え、それって……つまり……あぁ…… 「あの……すみません……俺……部屋で寝てきます」  理由がわかったので夏樹の膝から下りようとすると、やんわりと引き戻された。 「こぉ~ら。なんか勘違いしてるでしょ?」 「大丈夫です。勘違いしてないです。俺……バカだから、夏樹さんが二人っきりが嫌だなんて気付かなくて……俺だけ……夏樹さんと二人っきりって浮かれて……ごめんなさっ……っ」  ホント馬鹿だ……二人っきりってことは結局夏樹さんに負担がかかるだけなんだから、夏樹さんは嬉しくなんかないよね…… 「ほら、やっぱり勘違いしてる」 「してな、いっ!」 「浮かれてるのが自分だけだと思ってるところがすでに勘違いでしょ?」 「だって……え?」 「俺もかなり浮かれてたんだけど?雪夜って変なところは見てるクセに、なんで俺のあの浮かれように気付かないのかなぁ……逆にスゴイよね」  夏樹が苦笑しながら雪夜の涙を指で拭った。  声は優しいけど、なんか俺今(けな)されてない? 「でも……テラスに……」 「言ったでしょ?浮かれすぎてて自爆したって。あのままだと確実に雪夜を押し倒しちゃいそうだったから、テラスに行ったんだよ」 「……え?」  いやいやいや、言ってないっ!!  自爆って……浮かれすぎててってことだったの!? 「ずっと兄さん連中に雪夜取られっぱなしだったし、イチャイチャ出来てなかったし……だから二人っきりになれたのは俺も嬉しいんだよ。でも、我慢してた分、二人っきりだと自制がきかなくなりそうだったから、頭を冷やしにいったんだよ」  自制……?なんで自制するの?  二人っきりなんだから別に自制しなくても……  イマイチ納得できていない雪夜の額を、夏樹がツンとつついた。 「……雪夜、退院する時にお医者さんになんて言われたか覚えてる?」 「え?えっと……ちゃんと安静にしてなさいって……」 「それだけ?」 「お薬はちゃんと飲む」 「うん、他には?」 「えっと……?」 「……え?それだけ?」  え、他に何かあったっけ……? 「具合が悪くなったらすぐに病院に行く?」 「ん~……他には?」 「他に……?」  一生懸命思い出してみる。  う~ん……お医者さんに言われたのはそれくらいだったと思うんだけど……あっ! 「えっと、『後は夏樹さんの言うことを聞いていれば大丈夫だよ!』です!」  雪夜はパチンと手を合わせて、自信満々に夏樹に人さし指を立てた。 「んん!?……あ~わかった……あの医者全部丸投げしてきたな……!」  夏樹がこめかみを押さえてため息をついた。    え?だって、ホントにそう言われたよ?  詳しいことは夏樹さんが全部わかってるから、後は夏樹さんの言うことをちゃんと聞いて安静にしていれば大丈夫だって……  そもそも何で今そんなことを聞いてきたんだろう……  雪夜は夏樹の質問の意図がよくわからなくて困惑顔で首を傾げた。 ***

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