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夜明けの星 2-40(夏樹)

 ――空が薄っすらと白んでくる頃、別荘に着いた。  夏樹が部屋に入ると、丸まって眠る雪夜の隣で裕也がノートパソコンを弄っていた。 「お帰り~。どうしたの、早かったね」  裕也は突然帰って来た夏樹を見ても驚く様子もなく、そっとベッドから抜け出してきた。  恐らく、あちこちに仕掛けられている防犯カメラで夏樹が入って来るのを見ていたのだろう。   「浩二さんが出張代わってくれました。雪夜眠れました?」 「ちょうど今さっき眠ったところだよ。薬飲んだのに結構粘ったよねぇ……」 「そうですか、裕也さんも遅くまですみません」 「僕はいつもこれくらいの時間まで起きてるから大丈夫~」 「ははは……って、雪夜何見てたんですか?」  雪夜がタブレットを抱えて眠っていることに気付いて怪訝な顔で裕也を見る。  嫌な予感しかしない…… 「ん?なっちゃんのだよ~?」 「はあっ!?っもご……」  思わず大きな声を出しかけて自分で口を押さえた。 「ちょ、黒歴史動画って……ど、どれ!?っていうか、何でそんなものを!!」  裕也の場合、夏樹の知らないものまで持っている可能性が高いので絞り切れない!! 「いいじゃんか、それ見て安心して眠れたんだから。それが嫌なら今度から出張の時は自分で動画撮って雪ちゃんに送っておきなさ~い」 「ぅ゛~~~…………え?俺の動画見て眠れたんですか?」 「そうだよ~?エンドレスリピート(鬼リピ)してた。タブレットの充電が切れる前に眠れたみたいだからほっとしてたところ」 「へぇ……?で、一体何の動画だったんですか?」  雪夜がそんなにリピートするような動画って……変な動画じゃなきゃいいけど…… 「ほら、なっちゃんがアッキーにギター教えて貰ってた時に弾き語りしたことがあったでしょ?あれだよ」 「あ~……え、あれ撮ってたんですか!?いつのまに……」 「ふふふ、僕、隠し撮り得意だから!」 「いいご趣味で……」 「ありがとう!」 「褒めてません!!」 「え~?まぁいいや。とりあえず僕は部屋に帰るよ~。おやすみ~」 「あ、はい。お世話になりました。おやすみなさい――」 ***  裕也が出て行くと、スーツを脱いだ。  本当は荷物を一旦家に置いて着替えてから別荘に戻るつもりだったのだが、一刻も早く雪夜に逢いたくてそのままこっちに帰宅したのだ。  雪夜は、夜は特に夏樹が一緒にいないと不安定になる。  親友の佐々木達が一緒にいてくれてもなかなか眠れないくらいなので、今回も眠れずにまた不安定になっているのではないかと心配していたのだが……    うん、見事に爆睡してらっしゃる!  小声とは言え、結構長く裕也と話していたにも関わらず、雪夜はピクリとも動かなかった。  イヤホンをしているので音が気にならなかったのか、薬が効いてもう夢の中なのか……  まぁ、眠れたのはいいんだけど……  それにしても……俺の動画ねぇ……  夏樹が覗き込むと、画面は真っ暗だった。  もうタブレットの充電は切れているので、一体どんな動画だったのか確認することはできないけれど……  ギターを教えて貰ってた時って……高校時代か?また懐かしいものを……  え、待って。俺の動画で眠れた……って可愛すぎないっ!?  改めて考えるとちょっと、いやかなり萌え……っ  夏樹は雪夜を起こさないように床にしゃがみ込んで静かに悶えまくったあと、大きく深呼吸をしてベッドに滑り込んだ。 「ただいま――」  雪夜の耳からイヤホンを外して囁くと、そっと抱きしめて夏樹も眠りについた――   ***

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