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夜明けの星 2.5-8(雪夜)※
「まったく……夢だと思ってたなんて……雪夜はほんと面白いよね」
夏樹が雪夜の首筋に口唇を滑らせながら、さもおかしそうに笑った。
「んっ……ごめ……なさっ……ぁっ!」
雪夜は口を押さえていた手を少しずらして、またすぐに戻した。
ダメだ、やっぱり変な声が出ちゃう。
「夢だとあんな可愛いこと言えちゃうんだ?別に普段から言ってくれて構わないんだけどな~?」
「んん……っや、ぁん!」
雪夜は夏樹にかれこれ数十分は後ろを弄られていた。
フワフワして時間の感覚がよくわからないので、雪夜にしてみればもう何時間もそうされているような気もするし、まだ数秒のような気もする。
道端で世間話でもしているような涼しい顔をしている夏樹に対して、雪夜は羞恥心と戦いながら、喘ぎ声が漏れそうになるのを必死で堪えていた……
顔を押し付けていた枕は夏樹に早々に取り上げられてしまったので、右手で口元、左手で目元を隠そうと頑張る雪夜に「それだとキスできないよ」と夏樹が苦笑する。
ぅ~~……キスはして欲しいけど……
だって、さっきから夏樹さん俺のことガン見してくるんだもんっ!!
どうせ俺が変な顔してるのが面白いんでしょ~!?
顔が熱いから自分でも真っ赤になってんだろうなってわかるし……
「や、なつっ……さん……もう……っ」
「ん~?ま~だだよ。久しぶりにするんだからちゃんと解 さなきゃ。痛いのは雪夜だよ?」
「ぁんっ……でも……ひっく……なつ……ごめんなさいっ……おこら、ないでっ!」
乱暴にされているわけではない。
むしろ雪夜のために時間をかけて念入りに解してくれているし、愛撫だって……雪夜に触れる口唇も指先も何もかもが優しい。
でも……ちょっと不機嫌……イラついてるような気がする……
やっぱり、夢だと思って変なこと言っちゃったから……無理やりあんなこと言わせちゃったから……怒ってる?
「怒ってるわけじゃないよ」
「っん、ふ……っ」
夏樹は軽く眉を上げてフワッと笑うと涙混じりに謝る雪夜の口唇を塞いだ。
怒ってない……?
でも夏樹さんの雰囲気がいつもと違う……意地悪だし……敢えてイイところを避けてるでしょ?
だって、俺今日まだイってない……はず……
あぁ、そうだ……この感じ……
怒ってるんじゃなくて、どSモードなんだ。
いや、それもっとダメなやつっ!!
「言ったでしょ?可愛かったからいいよって。ただ、酔っ払ってなかったんなら我慢する必要なんてなかったから惜しい事したな~と思って。さっさとキスして押し倒しておけば良かったな~……ってね?」
「ひっ……んん、なつ……まっ、て……なんかクるっ」
夏樹の指が今まで敢えて撫でるだけだったソコをグッと刺激した瞬間、下腹部がきゅっとなって何かがせり上がって来るような感覚がした。
え、なにこれ……
「ん?イきそ?……もうそろそろいいかな」
ズルっと指を抜いた夏樹が、代わりに指よりも太くて硬いソレを当てがった。
あ……夏樹さんが挿入 ってくる……
って、こんなの無理っ!!
「や、だめだめっ……待っ……」
雪夜は急に不安に襲われて夏樹の胸を手で押しのけ無意識に逃げようとした。
だが、くすっと笑った夏樹に、あっという間に引きずり戻されていた。
ぅわっ!?
気がつけば、夏樹を押しのけようとしていた手も、両手首を掴まれ頭の上で交差して押し付けられていた。
「あっ……!」
「……だぁ~め。逃がさない。俺はもう十分待ったよ?」
いやいや、逃げるつもりはなくて!!
もちろんイヤでもないし……夏樹さんに抱かれたいし……でもでも……
ちょっと待ってぇ~!せめてもうちょっと心の準備を~~っ!!!
「……あ……の……」
「雪夜くん?心の準備をする時間はた~~っぷりあったでしょ?……なぁに?いつもと違うって?そりゃそうでしょ。俺を煽りまくった責任取ってもらうんだから、先に意識トバしちゃったら意味ないもの。蕩けるのはあ~と~で!挿入 る時もちゃんと俺を感じて貰わないと……ね?」
ヤバい……夏樹さんがめちゃくちゃ愉しそう ……
夏樹は雪夜が上に逃げられないように雪夜の頭をその手で押さえ込み、舌を絡めて口腔内の雪夜の弱い部分を刺激しながらゆっくりと、でも一気に腰を進めてきた。
「ア゛ぁっ!――……っは……っ……カハッ……ぁ゛、な……に……?」
全身を貫かれる圧迫感に一瞬息が詰まる。
夏樹に促されてようやく呼吸が出来た。
だけど……刺激が強すぎて頭の奥が痺れる……
「挿 れただけでイっちゃった?」
「っや……こわ……っア゛……っ……こわ……い゛っ……」
目の奥がチカチカして、頭がクラクラして……言葉が出てこない。
「怖くないよ、大丈夫。イってるだけだよ。久しぶりだから感覚忘れちゃったか……」
「イ゛……っ?」
ずっと夏樹さんに抱かれたいと思っていたのに、久々の行為と感覚に戸惑ってしまう。
うそっ……イク時ってこんなだっけ……!?
「雪夜、こっち見て?大丈夫だよ。怖くない。落ち着いてちゃんと息してごらん?」
急に夏樹の声が優しくなった。
次々溢れて来る雪夜の涙を舐めとっては額をくっつけて「大丈夫だよ」と囁く。
少し乱暴だったキスも、甘く優しくなって雪夜をあやすように何度も繰り返される。
夏樹の大きくて温かい手で頬を包み込まれて、少し安心することができた。
それでも……しばらく経験していなかった快感が怖い。
「こわ……や、っぁ゛……っん」
自分の意思とは関係なく身体の奥が、腰が、足が……勝手に痙攣してしまう……
夏樹に触 れられて安心する一方で、どこを触 られてもピリッと電気が走ったような感覚に包まれて……自分の身体じゃないみたいで怖いのに気持ち良い……
雪夜が快楽に抗おうと身体に力を入れると、中にいる夏樹が大きくなって熱く脈打つのを感じて、余計に怖くなった。
待って……今動かれたら俺……どうなっちゃうの……!?
「っ……雪夜、痛い?」
「んん……っ……な、い……」
言葉が出てこなかったので、首を小さく横に振った。
入念に解してくれたので痛くはない……けど……
「そか、良かった」
「や……やら、こわ……いっ!」
良くないぃいい!!
怖いんだってばっ!!
雪夜は夏樹に向かってふるふると首を振りながら、口をパクパクさせて涙目で必死に訴えた。
何かに掴まっていないと不安で、震える手で夏樹の腕をぎゅっと掴む。
「何が怖いの?ん?」
夏樹はそんな雪夜の涙を指で拭いながら優しく覗き込んできた。
「……き、きもち、すぎて……こわ……っ」
「ふっ、そっか…………じゃ、大丈夫だね」
夏樹が艶やかに笑って舌なめずりをした。
大丈夫って……何がっ!?
「……ふぇっ!?や、待っ、まだっ……んぁ゛っ!」
雪夜の制止も虚しく、緩々と夏樹が動き始めた。
その少しの刺激でも、また快感が押し寄せて来る。
「ゆっくり動くから大丈夫だよ。雪夜、目開けて!ほら、俺を見て」
「な、つ……っさ……っ」
「うん、いい子だね。怖かったらしがみついてていいから。声も我慢しなくていいよ。可愛い啼き声いっぱい聞かせて。ね?もっと乱れて気持ち良くなろうか――」
耳元を愛撫しながら低くて甘い吐息で囁く。
あ~もう……夏樹さんの声……腰に響くっ!
耳元で愛を囁かれる度に、頭の中が蕩けて、下腹部がキュンキュン疼く。
「ん……っ、雪夜きつッ……」
「……んぇ?」
「っあ~……俺も気持ちいい……ヤバいな、すぐイきそ……っ」
夏樹が軽く眉間に皺を寄せて少し余裕のない声で呟いた。
夏樹さんも……気持ち良い……?
「んっ……なつ……さん……もっとぎゅ……っして……?」
「ふふ、わかった。ずっとぎゅってしててあげるね――」
「ア゛ぁっ……――」
雪夜が覚えているのはそこまでで、あとはもう頭の中が真っ白になってただ嬌声をあげることしか出来なくて……
熱く火照った夏樹の体温が心地よくて、その温もりにずっと包まれていたくて……
快楽に溺れて気を失いそうになりながら、ただ必死に夏樹にしがみついていた。
薄れる意識の中、
愛してる……
夏樹が何度も囁いて、雪夜を強く抱きしめてくれた気がした――
***
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