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夜明けの星 3-3(雪夜)
「まさか、嫌がってるこの子に無理やり何かやらし~ことしようとしてた~?え、そういうのって『強制ほにゃらら罪』って言うんだけど、知ってる?まぁ、知らないからやってるんだよね~!でも、君たちもう大人だよね?普通に捕まっちゃうよ?いつまでも子ども気分じゃダメだよ~?」
ヘラヘラ笑いながらも周りに聞こえるようにわざと大きな声で言うその男に、さすがに周囲もざわつき始めた。
いや、もっと早くざわつけよ。俺が絡まれてたのみんな見てただろ!?っていうか、お前もほにゃららって何だよっ!?そこ別に隠す必要ないだろっ!
「ちっ、なんだお前、面倒くせぇなぁ。別に何もしてねぇよっ!」
「こいつが自分は男だーとか言うから悪ぃんだろ!」
「そんな貧乳に誰が手ぇ出すかっ!――」
犯罪と言われて少しビビったのか、ブツブツ言いながらも興ざめしたように男たちが散っていった。
……ん?貧にゅ……
「違っ!だから、俺はお……モゴッ!?」
男だ!と叫ぼうとした雪夜の口を、その男が塞いだ。
「シィー!あいつらせっかく向こういったんだから、これ以上煽るようなことしない方がいいよ」
お前こそ煽りまくってただろっ!!ああいう奴らは結構しつこいし、さっきのだって自分が悪いとは思ってないから、逆ギレして後からなんか仕掛けてくる可能性が高いんだぞっ!?
っていうか……
「んーんー!(お前も誰だよ!)」
「ん?なんだって?」
「んんんー!!(この手離せぇえ!)」
「あぁ、ごめんごめん。口塞いだままじゃ喋れないよな」
「ぷはっ……ゲホッ……」
男は笑いながら手を離すと、さりげなく雪夜の隣に座った。
「あんた一体何なんだよ」
「え?俺?ただの学生だよ?」
「そうじゃなくて……連れって……」
「あぁ、だって、絡まれてたから。ほら、街中 で変なやつに絡まれてる女の子とか見かけたら彼氏のふりして助けてあげたりするだろ?でもまぁ――……ブハッ!……ははっ」
そいつは話しながら自分の顎に指を当て、品定めをするように雪夜の頭のてっぺんからつま先までをじっくり眺めると、盛大に吹き出した。
「まさか絡まれてるのが男だとは思わなかったけどな。あははは……」
え、何それ。
それってアレだよね。『ただしイケメンに限る』ってやつだよね?
つまりこいつもモテるってことか……え、こいつイケメンか?
落ち着いてよく見ると、話し方や仕草がちょっとチャラいものの、見た目……というか、顔?はそんなに悪くはない……のかもしれない。
笑い方と目つきが何だか嘘くさいけど……少なくともさっきのやつらや見て見ぬフリしてたやつらよりはマシ……か。
「男で悪かったな。俺も絡まれたくて絡まれてたわけじゃないし。でもまぁ……助かった。ありがとう」
一応助けてくれたのでお礼は言っておく。
「いえいえ、まぁ、そんな可愛い顔してたら声かけたくなるよな」
「はぁ?可愛い顔って……俺、21だぞ?」
「え、年上!?うっそ……マジかよ。え、何で――」
ちょうど教授が入って来たので、話はそこまでになった。
講義の最中は雪夜は集中するので無駄話には付き合わない。
それは相川たちと一緒にいる時もそうなので、あの相川でさえも講義の最中は静かだ。(まぁ、相川はほとんど寝ているのだが)
その男も、最初のうちは小声で雪夜に話しかけて来ていたが、雪夜が完全に無視するものだから、そのうちに話しかけなくなった――
***
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