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夜明けの星 3-24(雪夜)
「え?また山口が休んでる?」
「うん……珍しいよね。佐々木の方に何か連絡来てた?」
「いや?何も……」
「そっかぁ~……風邪でも引いたのかなぁ~」
夏樹と山口が初対面したあの日以降、山口が絡んで来なくなった。
夏樹さんが、俺に関わるなって言ってくれたから?でもあれくらいでビビってやめるようなやつかなぁ……?
なんにせよ、必要以上に絡んでこなくなったのは平和だからいいのだが、あれから約二週間。
講義まで休んでいるとなると……さすがにちょっと気になる。
「あいつが休むようになってからも、変に絡んでくるやつはいないんだっけ?」
「え?あ~……えっと、それが……この間までは大丈夫だったんだけどね……」
山口が講義に出て来なくなってからも、しばらくは雪夜に絡んでくるやつはいなかった。
そのままずっと平穏に講義を受けられれば良かったのだが、ちょうど先ほどの講義で、山口がここしばらく講義に出て来ておらず、雪夜がひとりだということに気付いた男女数人が声をかけてきた。
初日に絡んできた奴らほどは面倒な感じはしなかったが、山口とのことを根掘り葉掘り聞いてきては勝手に盛り上がっていたので、雪夜はいまいちノリについていけなかった。
「あ~、そういや付き合ってるって勘違いされてるんだったな」
「そうなんだよね。俺は男だって言いたかったんだけど、なんか圧が凄くて……」
「雪夜、そういうノリ苦手だもんな。俺もあんまり得意じゃねぇけど……」
「うん、でね?タイミングを見失って困ってたら、ちょっとヤンキーっぽい人に話しかけられてね。その人が来た途端、みんなサーっていなくなったんだよ」
「あ、もしかして……白季 組の?」
「うん、裕也さんの防犯ブザー持ってたから、間違いないと思う」
夏樹から、何かあった時のために、白季組の人がすぐ近くで見守ってくれているとは聞いていた。
でも、雪夜にはその人たちの顔がわからないので、雪夜に近付く時には裕也お手製の防犯ブザーを見せてくれることになっている。
結局、山口がいない時はその人が来てくれることになった。
「そっか、じゃあひとまずは安心だな」
「うん!見た目はちょっといかついけど、すごく礼儀正しくて、優しい人なんだよ~!」
「そかそか、また今度俺たちも会わせてくれよ」
「うん、二人にもちゃんと紹介するね!」
「さてと、そろそろ次の教室に行くか」
佐々木が雪夜の頭を撫でて、時計を見た。
「あ、俺ちょっとお茶買って来る!すぐに追いつくから先に行ってて!」
「一緒に行こうか?」
「ううん、自販機で買うだけだから大丈夫だよ~」
「わかった。それじゃ、先に行くぞ」
「はーい」
佐々木たちの背中を横目に、食堂の入口にある自販機でお茶を買おうとした雪夜は、欲しいお茶が売り切れていることに気がついた。
う~ん、もうひとつの方はちょっと苦いんだよな~……売店まで行くか。
食堂から売店までは走ればすぐの距離だ。
雪夜は急いで売店に向かった――
***
「お茶お茶~!……ぶっ!」
お目当てのお茶をゲットして、ご機嫌で走り出そうとした雪夜は、前から来た誰かにぶつかった。
「す、すみませ……あれ?」
「雪ちゃん先輩、鼻大丈夫?」
鼻を押さえながら相手を見上げると、目の前には山口が立っていた。
「山口!お前……何やってんだよ!体調は大丈夫なのか?」
「え?うん、元気だけど?そんなことより、雪ちゃん先輩、ちょっと来て!」
飄々と答えた山口が、雪夜の手首を握った。
「元気ならなんで講義休んで……って、おい、どこに行くんだよ!?」
山口がグイグイと雪夜を引っ張って歩き始めた。
しかも佐々木たちがいる方向とは逆方向だ。
「いいからいいから、雪ちゃん先輩に会いたいっていう人がいるんだ」
「俺に会いたい人?いや、俺これから講義が……後じゃダメなのか?」
佐々木たちに連絡を取ろうとしたが、山口の引っ張る力が強くて、気を抜くと転んでしまいそうだったので、ひとまず連絡は諦めた。
「佐々木先輩たちがいない方が都合いいんだよな~……」
「は?」
山口の呟きに眉をひそめた時、遠くから雪夜を呼ぶ声が聞こえた――……
***
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