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夜明けの星 4-7(夏樹)

「わぁ~、久しぶりだ……」 「大学入ってからは、初めての帰省なんだっけ?」 「はい!」  夏樹は、嬉しそうに実家を見つめる雪夜の横顔を、複雑な想いで眺めていた。  裕也の調べでは、この家には今は誰も住んでいないはずだ……  それなのに、兄たちはなぜここを選んだのか――……? ***  夏樹が佐々木の家に着いたのは、今朝の9時過ぎだった。  実は昨夜雪夜との電話の後、浩二と一緒に斎が迎えに来てくれて、夜中にはこちらに帰ってきていた。  すぐに雪夜に会いに行きたかったが、裕也たちといろいろと打ち合わせをしていたので、少し遅くなったのだ。  雪夜の兄たちは、会うのは昼頃がいい、と言ってきたらしい。  だが、雪夜が夕方以降じゃないと無理だ。と言い切ると、承諾してきた。  それは夏樹たちの読み通りだ。  読みが外れたのは、会う場所。  夏樹たちは、雪夜の義父のマンションか、兄たちの宿泊しているホテルあたりを予想していたのだが、雪夜の兄たちが指定してきたのは……まさかのだった。  雪夜は現在実家に誰も住んでいない事を知らないわけだが、わざわざ実家に呼んだということは、雪夜にはみんながバラバラに住んでいることを、知らせるつもりはないということなのだろうか……  雪夜の兄たちが何を考えているのかわからない。  一応、何かあった時のためにと、裕也からいつもの小型カメラや盗聴器諸々を渡されていた。  ここまでは裕也の車で来た。  夏樹たちを降ろした裕也たちは、帰るフリをして家の周辺を見張っているはずなので、何か変わったことがあればすぐに対処してくれることになっている。  朝から感じている嫌な予感……頼むから外れてくれ…… *** 「夏樹さん?入らないんですか?」  玄関の前で立ち止まった夏樹を、雪夜が不思議そうに見上げてきた。 「……ねぇ、雪夜」 「はい」 「愛してるよ」 「……ふぇ!?……」  唐突な夏樹の言葉に、雪夜が顔を真っ赤にして固まった。  毎日のように伝えていても、この反応だ。   「忘れないで。、俺は傍にいるし、……ずっと愛してる」  雪夜にだけ聞こえるトーンで囁くと、雪夜の左手のリングに口付けた。 「えっ、ああああの……は、はい……って、ななななんでこんなところでっ!?」 「だからだよ。ちゃんと覚えててよ?」    何があるかわからない。  また、先日のようにパニックになるかもしれない。  もしかしたら、それ以上のことも……  だからこそ……  忘れないで欲しい。  思い出して欲しい。 「わ、わかりました……」 「じゃあ、行こうか」 「あっ!夏樹さんっ!」  雪夜に腕を引っ張られたので、夏樹はチャイムを鳴らそうとしていた手を止めた。 「ん?」 「あの……お、俺も……あの……その……」 「うん、ありがと」  最近は、夏樹が伝えると雪夜も伝えようと頑張ってくれている。  照れてなかなか言葉には出来ないが、それでも嬉しい。  夏樹は、ふっと微笑むと、雪夜の肩を抱き寄せ髪に軽く口付けた。 「ちょっと……君たちはいつになったら入ってくるつもりなんだい?僕、ず~~~っと待ってるんだけど!?」  突然玄関が開いて、仁王立ちをした慎也が苦々しい顔で夏樹を見てきた。 「あ、しん兄さん!」 「雪くん、おかえり!ささ、早く入っておいで!」 「あ、うん!ただいま~!夏樹さん、どうぞ!」  雪夜が嬉しそうに、夏樹を家の中へと(いざな)った――…… ***

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