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夜明けの星 4-12(夏樹)
「雪夜をどこに連れて行くつもりだったんですか?」
「……」
夏樹の質問には答えず、達也たちは視線を下に落とした。
黙秘するつもりらしい。
「もしかして~、雪ちゃんのお母さんがいる場所……とか?」
「……っ!?」
裕也の言葉に、達也たちがハッと顔を上げた。
「お……お前たちは一体何なんだっ!?俺たちの弟を……雪夜を一体どうするつもりなんだっ!!」
「いや、それはこっちが聞いているんですが……?」
「お前たちは……どこまで知っているんだ……?」
達也が夏樹を睨みつけた。
「う~ん、まぁ、たぶん~、お兄さんたちが思ってる以上に知ってると思うよ~?例えば……雪ちゃんの本当の家族のこととか~、山での遭難事故の真相とか~、記憶のこととか~……」
「ひっ!?」
裕也の言葉に、慎也が顔色を真っ青にして達也を見た。
緊迫感のない裕也の喋り方は、実は一部の……やましいことのある人間にとっては、ある意味怒鳴りつけて脅すよりもよく効く。
「やはり、おかしいと思ったんだ……雪夜に恋人ができただなんて!お前が雪夜に近付いたのは……そういうことか……。なぜ……なぜ今になって……そんな昔のことを掘り返す!?あの子はようやく……っ……あの子をこれ以上傷つけないでくれっ!もう我々のことはそっとしておいてくれっ!」
達也が涙ながらに叫んだ。
その達也の様子に驚いて、夏樹は斎たちと顔を見合わせた。
「え~と……ちょっと待って下さい。たぶん、あなたは誤解してますよ。俺は雪夜とは本当に偶然出会って、というか、そもそも俺を最初に拾ったのは雪夜ですし、いろいろありつつも今はちゃんと恋人同士だし、俺は本気で雪夜を愛してます。俺が雪夜を傷つけることは絶対にないですよ」
「そんなこと信じられるかっ!現に、お前たちはあの子のことをいろいろ調べているじゃないか!」
「調べたのは、雪夜を守るためです」
「……守るため?」
達也が探るような目を夏樹に向けた。
「以前会った時にも言いましたが、恋人を守るのは、当然です」
恋人というと、達也が一瞬渋い顔をする。
「雪夜は大学に入ってから隣人トラブル等いろいろとあったので、そのせいでよく不安定になっていました。その時に口走っていることが、普段の雪夜から聞いていたことと違うことに気がついて……――」
夏樹は雪夜の過去を調べることになったきっかけについて、達也に話した。
「だが、雪夜の過去は簡単にはわかるはずが……」
「そうなんだよね~。もうね、本当に調べるの大変だったんだから~!」
裕也がさも大変だったというように、やれやれと肩をすくめる。
「あなたは俺が雪夜に近付いたのはどんな目的があったからだと思ったんですか?なぜ俺が雪夜を傷つけると思ったんです?」
「それは…………お前たちはあの子の過去について、もうほとんど知っているのだろう?」
達也が、少し考える素振りを見せた。
夏樹の言葉を信じていいのかどうか図りかねている様子だ。
「えぇ、まぁ……でも、それらはあくまで書類上のことなので、全てを把握しているわけではないですよ。それに、俺は当事者の口から本当の話が聞きたい」
「わかった……と言っても……山での事件のことについては、実は私たちもよく知らされていないんだ……――」
完全に信用したわけではなさそうだが、とりあえず敵意はないと判断したのか、達也がポツリポツリと話し始めた。
***
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