361 / 715

夜明けの星 番外編1-1(夏樹)

 《~All I want is …(欲しいものは…)~》  その日は、珍しくお見舞い客が重なった。  兄さん連中は来る時間はずらしていたものの、誰も帰らないのでどんどん増えていき、昼前には佐々木と相川もやって来た。  雪夜のいる特別室は他の個室に比べれば広いとは言え、さすがにこれだけ人が集まると…… 「うん、さすがに狭いな」  斎が室内を見渡して笑った。 「そうですね。っていうか、いつもお見舞いは交代で来てくれてるのに今日はどうしたんですか?」 「ん?あぁ、俺も全員来たら邪魔だっつったんだけどな。みんな楽しみにしてたから、直接見たいってうるさくて……」  直接見たい?何を?  兄さん連中が楽しみにしてることって何だ!?  ……ぅわ~……嫌な予感しかしない……  この人らが楽しみにするようなことは、どうせろくなことじゃないんだ……  夏樹が頬を引きつらせていると、また誰かの足音がした。 「お待たせ~!持ってきたよ~!」  勢いよく入って来た裕也が、手に持っていた紙袋をちょっと持ち上げながら笑った。 「よ~し、んじゃ始めっか!」  浩二がパンと手を叩くと、室内が急に慌ただしくなった。  佐々木と相川が、カーテンを閉めて、更に暗幕を張る。  (たかし)玲人(れいじ)は壁に白い布を張り始め、(あきら)と裕也が何やら機械を弄り出す。  斎と浩二は……夏樹の見張りらしい。  え、これ必要!? 「待って!何を始めるつもりですか!?」 「いいからいいから。お前は座ってろ」 「いや、とりあえず、何をするつもりなのか教えてくださいよ!!」  浩二に無理やり椅子に座らされた夏樹は、自分だけが何が起きているのかわかっていないというこの状況に、若干慌てた。 「落ち着けって、別に変なことはしねぇよ。ま、俺らはゆっくり待とうぜ」  斎が気楽に言いながら隣に座ると、夏樹の肩に腕を回してきた。  斎の顔は笑っているが、さりげなく肩に圧をかけられ、夏樹は逃げられなくなった。 「斎さん、肩に圧かかってますけど?」 「あ?なに、浩二の腕の方がいいって?」 「どっちもイヤです!!」 「ははは、ナツは正直だなぁ~」 「ごめんなさい!浩二さんやめて!頭潰そうとしないでっ!!」  夏樹が斎と浩二に遊ばれている間にも、着々と準備?は進んでいった。 *** 「そっちの準備OK~?」 「ほいよ。出来た~!」 「んじゃ、電気消して~!」  裕也の声に、誰かが部屋の電気を消した。  一瞬室内が真っ暗になって、すぐに壁に張られた白い布に光が当たった。    プロジェクター?何か観るのか?  白い布を張っている時点で、スクリーンだろうとは思ったけど……   「斎さん、これ一体……」 「しーっ!いい子だから、静かに観てろ」  斎に軽くあしらわれて、夏樹が諦めのため息を吐いた時……  壁一面に映像が映し出された―― ***

ともだちにシェアしよう!