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夜明けの星 番外編1-3(夏樹)

――でね~?クマしゃんきいてるぅ~!?なちゅきしゃんはね~、かっこい~んだよ~!」  焦点の定まらない目で雪夜がカメラ、もとい、クマの目を覗き込む。 「めちゃくちゃやさし~し~、おりょーりもじょーずらし~、さいこーれしょ~?」 『え~、でもさ~、そんなにいい男だと浮気とか気にならないクマ?』  突然、加工された可愛らしい声でクマが喋り出した。  おい、クマ!?っていうか、裕也さんだろコレ!  何喋ってんだ!?いきなりクマのぬいぐるみが喋ったら雪夜がびっくりするだろ!?  しかも何その語尾!!  夏樹の心配をよそに、雪夜は…… 「あれ~?クマしゃんおしゃべりじょーずね~!」  と、喜んでクマのぬいぐるみに抱きついた。  さすが酔っ払い……   「あのね~、うわきはね~……きになるけど、きにしなーいのっ!だっておれ おとこらからね!」  いや、気にして!?男とか関係なく気にしよう!? 『なんで気にしないクマ?』 「なちゅきしゃんはモテモテなんれしゅ!だから……おれがひとりじめしちゃらめなの!」 『クマわっかんな~い!だって好きなんでしょ~?独り占めしちゃえばいいクマよ~!』 「むぅ~りぃ~!」 『クマ~?』 「……らって……なちゅきしゃんは~……やさしくてぇ~……――」  酔いが回ったのか、だんだんと会話が成り立たなくなっていく。  半分夢見心地の雪夜が、クッションを抱えてソファーにもたれた。  そのまま寝落ちするのかと思いきや、一度閉じた瞳を薄く開いてクマに微笑んだ。 *** 「あのねぇ~……はね、だめなこなの」  雪夜の声が少し変わった。  酔ってはいるみたいだが、先ほどよりは呂律が回っている。  でも、発音がたどたどしい。それに……  ゆきくん?  雪夜が自分のことを『雪くん』と呼んでいたのは……子どもの頃…… 『何がだめクマ?』 「だめなこ。ねぇねがいってた。ゆきくんはみんなをにするんだって。だからいきてちゃだめなんだって」  雪夜の言葉に、病室内が凍り付いた。 ***   「おい、ユウ!?」  裕也の傍にいた晃が一時停止ボタンを押し、浩二たちが困惑顔で一斉に裕也を見た。  兄さん連中にしても、この動画は予想外だったらしい。 「うん、わかってるよ。話は後で聞くから、まぁ、とりあえず見てみようか!ね!」    裕也は全員の困惑した視線を浴びながらも、一向に気にしていない様子で、意味ありげに含み笑いをしながら、続きを見よう!と言った。  みんなはちょっと苦い顔をしながらも、裕也がそう言うからには、何か理由があるのだろうと、ひとまず元の位置に戻った。  夏樹は、余裕の笑みを浮かべる裕也の横顔をそっと眺めた。  裕也は、兄さん連中の中でも特に、何を考えているのかわからない人物だ……  裕也さんは一体なにを俺に見せたいんだ?  それに、これって……雪夜は、この時……記憶が……?  全員が元の位置に戻ったのを確認して、裕也が再生ボタンを押した――…… ***

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