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夜明けの星 番外編1-7(夏樹)
「はい、これは前半のスマイル動画と写真だけを編集したやつ。さっき流したバージョンのやつは……」
「あれもください」
鬼の話には驚いたが、あれは記録に残っていない雪夜の真実 だ。
目を覚ました後、雪夜の記憶に変化があった時には、あの話が役に立つかもしれない。
……それより……
「ところで、そのスマイル動画ですけど……なんでみんなして雪夜専用フォルダ作ってるんですか!!」
「え?そりゃ作るだろ?お前作ってねぇの?」
浩二が何言ってんだこいつ、という顔をする。
いや、そういう浩二さんこそ何言ってんだ!?……ですよ!!
「作ってますよ!!俺はもちろん作ってますけど!?だって雪夜は俺の恋人ですから!?でもなんで兄さんらまで……っていうか、いつのまにあんなに撮ってたんですか!?」
いくら兄さんたち全員分と言っても、写真に至っては目が追い付かないくらいいっぱいあった。
「そりゃ~、別荘で会った時とか~、お前がいない隙 を狙ってちょっと……な?」
なんで俺がいない隙を狙うんだよ……!?
「だって、お前がいたら撮らせてくれねぇだろ?」
「当たり前です!だいたい、雪夜は写真とか苦手で……」
「え?結構ノリノリで撮らせてくれたぞ?」
「……へ?」
キョトンとした顔の夏樹をよそに、兄さん連中が一斉に喋り出す。
「俺もカメラ向けたらノリノリだったぞ?」
「あ、俺も~。なんか、血の繋がってない兄ちゃんたちが写真撮るの好きで、子どもの頃からしょっちゅう撮られてたって言ってたな」
「そうそう」
あの雪夜がノリノリだって!?
いや、考えてみれば……あの雪夜を溺愛しまくりの達也と慎也が、雪夜の写真を撮ってないはずないんだよな……
それに、さっき画面に映し出されていた雪夜は、たしかにどれもいい笑顔だった。
「え、でも待って下さい!だって、雪夜は俺が写真撮りたいって言ったら……」
いつも「イヤだ」と言ってなかなか撮らせてくれなくて……
「あぁ、お前に撮られるのは恥ずかしいんだってさ。それに、『本当は一緒に撮りたいけど、夏樹さんはカッコ良すぎて、顔面直視できないし、同じ画角 に入るのも緊張しちゃうから無理なんですぅ~……』とか何とか言ってたぞ?」
晃 が、その時のことを思い出したのかちょっと苦笑した。
「っつーか、俺たちもいい男だよな?ナツになんか負けてねぇだろ?」
「そうだよな?むしろ俺の方がナツより優しいし、カッコ良いよな?」
隆 と浩二がお互いの顔を見つめて、自画自賛した。
「でも……雪ちゃんは俺たちには緊張しねぇんだってよ。まったく、無邪気な顔して言ってくれるよな~。ま、雪ちゃんは可愛いから許しちゃうけどな!?」
「……と言うわけだ。良かったな、色男!」
兄さん連中はちょっと肩を竦めると、ニヤニヤしながら夏樹を見た。
え、ってことは……雪夜が撮らせてくれないのは俺だけってことか……
その理由がカッコ良すぎて緊張するからって、可愛いし嬉しいけど、なんて言うか……
「兄さんたちズルいぃいいいい!!!俺も雪夜と撮りたかったぁあああああ!!!!!」
夏樹は手で顔を覆って、その場に崩れ落ちた。
もちろん、夏樹だって雪夜と一緒に撮っている写真はある。
でも、ほんの数枚で、残りはほぼ隠し撮りだ。
恋人を隠し撮りって……俺は変態かっ!
一緒に撮ってるのだって、一枚撮るために雪夜を説得して口説き落とすのにどれだけ時間がかかったか……
それを、兄さん連中はいとも簡単に……くそぉおおおお!
「まぁまぁ、そんなに落ち込むなって。え、俺らのフォルダ見せない方が良かったか?」
「――……しょ……?」
「ぁ?なんだって?」
「どうせ他にもあるんでしょ!?もう全部出して下さいよ!!雪夜フォルダの中身!!そして全部俺にください!お願いします!」
夏樹が立ち上がって半泣き状態で浩二らに手を差し出すと、それを見ていた斎 が噴き出した。
「ほらな?俺の言った通りだろ?」
斎がしたり顔で浩二たちを見た。
「マジかよ、イッキの独り勝ちか~」
「ナツは単純だからな。これくらい余裕だろ。よ~し、アキ、俺のボトル入れとけ。こいつらの奢りな」
「りょ~かい。一番高いやつ入れとく――」
はい?何の話?俺が単純だからなんだって?
え、で?雪夜フォルダは?え?ちょ……ええ~~……!?
どうやら、何かに対する夏樹の反応で勝手に賭けをしていたらしい。
兄さん連中に完全に置いてけぼりをくらった夏樹は、同じく所在なさげに宙に浮く自分の手を虚しく見つめた――……
***
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