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夜明けの星 6-15(夏樹)
「雪夜~、おはよ!……今朝の調子はどう?」
「~~~……っ」
夏樹の声に頭を上げた雪夜が、顔をしかめながら薄く目を開けて、ボスッと枕に顔を押し付けた。
「まだ眠たいか~……もうちょっと寝てもいいけど、先にお薬だけ飲んでおこう」
「っ!!」
夏樹が抱き起こそうとすると、雪夜が夏樹の手を振り払ってきた。
今朝はご機嫌斜めだ。
「はいはい、ご飯は後でいいから、お薬は飲んでおこうね」
「……~~~っ!!」
昨日は興奮してなかなか眠れなかったので、今朝こうなることはもうわかっていた。
夏樹はぐずる雪夜の手をかわしながら抱き起すと、手早く薬を飲ませてまた寝かしつけた。
***
夏樹がコップを片付けていると、雪夜が寝不足になった元凶がやってきた。
「雪ちゃ~~~ん!おっはよ~!」
「起きてるか~?」
「もう朝だぞ~!」
わいわい言いながらやってきたのは、浩二、斎、隆だ。
「シィ~ッ!皆さんお静かにっ!今さっき薬を飲んでまた寝たところで……」
「なんだ、また寝ちゃったのか?」
浩二が残念そうに寝室を覗く。
「ちょっ、斎さん、何持ってるんですか!?」
夏樹は、斎の手に乗っているモノを見て思わずポカンと口を開けた。
「何って……見りゃわかんだろ?なに、お前今朝はまだ外見てねぇの?」
「いや、外は見ましたけど……」
「菜穂子 が雪ちゃんに見せてあげてって作ってくれたから、持ってきた」
「え、なお姉が?」
「菜穂子とユウはまだ外でいっぱい作って遊んでるぞ」
「でもそれ、ここに置いておくと解ける……って、ちょっと浩二さん、隆さん、服にいっぱいついてるじゃないですか!外で払って来て下さいよ!」
足元に水滴を落としている浩二たちに慌ててタオルを投げつける。
「あらら、ホントだ」
「浩二さん!!ここに落とさないでぇ~~!!床が濡れるぅ~!」
「うるせぇなぁ~。後で拭きゃいいんだろ?」
「……っ?」
兄さん連中とじゃれていると、雪夜が目を擦りながら歩いて来た。
「あ゛、ほらぁ~~!雪夜が起きちゃったじゃないですか!」
「いや、どう考えてもナツの声のせいだと思うぞ?」
「……!?」
雪夜が兄さん連中を見て、ちょっと驚いた顔をして固まる。
寝起きなので混乱しているのだろう。
夏樹は雪夜を抱き上げると、一人ずつ紹介をした。
「あ、雪夜、大丈夫だよ。兄さんたちだから。え~と、シュークリームの浩二さんと、美味しいご飯作ってくれる隆さんと、お馴染みの斎さんね」
――別荘に来てからおよそ7か月。
最初は会う人を限定していたが、今は退院前のように他の人とも同じ空間にいられるようになった。
ただ、兄さん連中は人数が多いので、名前だけではイマイチわかりにくい。
そこで、雪夜がイメージしやすいように、名前の前にひとこと説明をつけるのが定番になった。
「ナツ?前から思ってたんだけど、なんか俺の紹介おかしくないか?」
「え?」
「シュークリームの浩二さんって……俺は芸人かよ!」
「雪夜の中ではもう“浩二さん=シュークリームの人”なので」
「嘘だろ……!?雪ちゃ~~ん、俺……シュークリーム以外にもいろいろ買って来てたはずなんだけどなぁ~……」
浩二がちょっと情けない声を出しながら雪夜に話しかけた。
「……?」
夏樹にしがみついていた雪夜が、夏樹と浩二を交互に見て、首を傾げる。
「雪ちゃん、浩二さんのことわかるか~?シュークリームの浩二さんだぞ~」
「……!」
「ははは、そかそか、雪ちゃんがシュークリームで認識してるなら、もうそれでいいか!」
雪夜がうんうんと頷くのを見て、浩二が苦笑した。
「雪ちゃん、浩二さんのとこに来るか~?抱っこしてや……って、おいイッキ!?」
「雪ちゃん、これな~んだ?」
「っ!?」
斎が、雪夜を抱っこしようと手を伸ばして来ていた浩二を肩で押しのけると、手に持っていたものを雪夜に見せた。
「っ!?っ!?」
雪夜は、ポカンと口を大きく開けると、びっくりした顔で夏樹の肩を叩きながら「見て!あれ見て!」と言うように指差して伝えてきた。
「ん?うん、雪ダルマだよ。可愛いね。なお姉が雪夜にって作ってくれたんだってさ!」
***
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