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夜明けの星 6-59(夏樹)
今日は早いな~……
その日によって違うが、だいたい夏樹がいなくなって一時間程すれば、雪夜はソワソワしてくる。
時計が読めなくても、体内時計で何となくわかるらしい。
「なつきしゃああああん!!」
「あ~、よしよし、もう帰って来るからね~!もうちょっと浩二さんと一緒に待ってような?」
「ぃやんよ!!こーしゃん、いやんなの!!なつきしゃんがい~の!!」
「ええ~!?浩二しゃんダメ~?」
「なつきしゃんいくのおおお!!」
「あ、雪ちゃんちょっと待って!」
夏樹が扉を開けようとした瞬間、中から雪夜の泣き声と浩二の情けない声が聞こえた。
だいぶ滑舌が良くなってきた雪夜だが、やはりその日の年齢や感情の昂りによっては滑舌が悪くなる。
兄さん連中は滑舌の悪い雪夜がツボらしく、雪夜に読み書きを教えつつも、滑舌が悪い日は顔がにやけている。
まぁ……俺もツボだけどね!?
「ただい……おっと」
「なちゅ……ぅぶっ!」
夏樹が扉を開けると、ちょうど部屋から飛び出そうとしていた雪夜がぶつかって来た。
「ごめん、雪夜!顔大丈夫?」
「ぅ~……なつきしゃん?」
鼻を押さえながら雪夜が夏樹を見上げて来る。
「はい、夏樹さんですよ~?ただいま~!」
「なつきしゃん、おしょいいいい!!」
夏樹が抱き上げて笑いかけると、雪夜は口唇を尖らせて夏樹の肩をペチペチと叩いた後、ぎゅっと抱きついてきた。
「ごめんごめん、ちょっと遅かった?」
「おしょいのっ!しゅぐっていった!」
「うん、浩二さんと遊んでたらすぐだったでしょ?」
「こーしゃん、ぃやんよ!なつきしゃんがいーの!」
「浩二さんイヤなの?どうして?……浩二さん、何やらかしたんですか?」
雪夜がやけにお怒りなので浩二に矛先を向けると、二人を見ながら頭を掻いていた浩二が苦笑いをした。
「ちょっと本気で相手したら、怒られた」
いつもよりも早く雪夜がぐずり出したのは、どうやら浩二との遊びが原因らしい。
「え~?このボードゲームは初めてするから手加減してやってって言ったじゃないですか!」
「いや、そうは言うけど、雪ちゃん強いんだよ!だからさ~、つい俺も熱くなっちまってさ~……その……手加減を忘れて……」
「こーしゃん、ずるっこしゅるの!めっ!」
「ごめんって~!でもズルはしてないぞ~?」
最近雪夜はボードゲームにハマっている。
兄さん連中がこぞっていろんなボードゲームを持って来てくれるので、病室内には結構な数のボードゲームがある。
内容によっては文章を考えたり推理をしたりと子ども雪夜には難しいものもあるが、何回かしていくうちにだいたい理解できるし、その日の年齢に合わせて遊べるものを選んでいる。
「よし、それじゃ今度は夏樹さんが一緒にするからもう一回やってみようか」
「なつきしゃん、つぉい?」
「ん?そうだね~、雪夜がお手伝いしてくれたら勝てるよ」
「あい!おててだいしましゅ!」
「あ、ズルいぞ!2対1かよ!?俺も誰か……おい、ユウこっち来いよ!!」
夏樹が雪夜につくと聞いて、浩二がカメラに向かって手を振った。
たぶん、裕也たちはまだ院長室でこの部屋の様子を見ているはずだ。
「ずるっこないよ~!ね~!?」
雪夜が浩二にちょっと舌を出して、夏樹に同意を求めて来た。
うん、ズルいとかズルくないとか以前に、浩二さんと雪夜のレベルが同じな件について……
あ、今更だな。
っていうか、そんな仕草誰に教えてもらったの!?
「ほらほら、始めるよ~!」
夏樹は苦笑しながら床に散らばったカードをかき集めた。
***
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