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夜明けの星 6.5-8(夏樹)

 グズグズでもうほとんど目が開いていない雪夜に歯磨きをさせて、文字通りベッドに転がした時にはもう雪夜は夢の中だった。  ギリギリ間に合った……  とりあえず、歯磨きしたからこのまま朝まで寝ても大丈夫だな。  歯磨きをせずに眠ってしまった時には夏樹が磨いてやればいいだけなのだが、眠っている時に歯磨きをしていると、たまにうなされて急にガバッと起き上がる時があるので危険なのだ。  だから、なるべく歯磨きは雪夜が起きている状態でするようにしている。 「あ゛~……疲れた……」  伸びをしながら雪夜の隣に寝転がる。  兄さん連中や愛ちゃんたちの相手をするのはかなり疲れる。  楽しいけど、ツッコミ疲れる……みんな揃って真顔でボケまくるし……  いや、ボケてるわけじゃなくて、結構真面目にとんでもないことをしようとするから怖いんだけどね……   「ん~~~……むぅ……ふふ」  雪夜がゴロンと夏樹の方を向いてむにゃむにゃと言いながら微笑んだ。 「ゆ~きや……何の夢見てるの~?」  起こさないように囁いて、頬を軽く撫でた。  眉間に皺を寄せてうなされていることの方が多いので、たまにこうやって幸せそうな寝顔を見ると安心する。 「さてと……シャワー浴びようかな……ん?」  夏樹がシャワーを浴びようと起き上がった時、携帯が鳴った。 「はい、夏樹で……」 「あ、なっちゃ~ん?雪ちゃん寝た?」  夏樹の声は裕也の声にかき消された。 「雪夜ですか?寝ましたよ」 「そかそか、それじゃちょっと映像出すね~」 「ん?」  画面を見ると、愛華たちが映っていた。 「さすがに雪坊の前じゃ話せないからねぇ」 「何が?」 「例の犯人のその後について」 「……っ!?ちょ、え、待って!!あ~……どこに入れたっけ……え~っと……」  愛華の言葉に、夏樹は慌てて病院から持ち帰った荷物を漁った。 「あ~もう!裕也さん、イヤホン貸して下さい!」  イヤホンを探していたのだが、すぐに見つからなかったので予備を大量に持っているであろう裕也に素直にお願いをする。 「ああ、それなら、衣類が入ってる大きなスポーツバッグの外側の小さいポケットのとこに入ってるよ~」 「え?あ、これか。ありがとうございます」  イヤホンを装着して、愛華たちの声が外に漏れないようにした。 「はい、お待たせしました!」  例の犯人……とは、雪夜を監禁していた犯人のことだ。  つまり、雪夜には一番聞かせたくない話だ。  だから愛華たちも雪夜が寝るのを待っていてくれたのだろう。  だが、寝ていると思って油断して話をしていると、いつ雪夜が起きるかもわからないし、寝惚けながらでも雪夜の耳に入ってしまうかもしれない。  雪夜の実家での……あんな失敗はもう二度と繰り返したくない。  かといって、誰か兄さんに来てもらって、夏樹が向こうに戻って話を聞くのは……雪夜が目を覚ました時に見慣れない部屋だと不安だと思うので、傍にいてやりたい。 「というわけで、俺はほとんど聞くだけですが気にしないで下さい」 「ああ、わかってるよ。そうだねぇ……一応、簡単に言えば……真犯人の身元はわかったし、現在の居場所もわかってる」 「どこにいるんですか?」 「土の下」 「……は?」  夏樹は、自分でもどこから出たのかと思うくらいマヌケな声を出していた。   ***

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