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夜明けの星 7-4(夏樹)

 鮮やかに染まった葉っぱが舞う中、優雅にテラスでお茶をしている兄さん連中に茶菓子を出しつつ、夏樹は雪夜を外に出す相談をしていた。  これから冬になると、なかなか外には出られなくなる。  その前に、少しだけでも雪夜をどこかに連れて行ってやりたい。  もちろん、トラウマを刺激しないような場所だ……    この数日、斎たちは副業の方で忙しかったので別荘には来ていなかったのだが、ようやく副業が落ち着いたらしく、今日は久々に斎、浩二、裕也が来ていた。    斎たちは雪夜を外に出すことについては反対はしなかった。  むしろ、夏樹が言い出したことに驚いていた。  それもそのはずで、夏樹は雪遊びや花見の時には、雪夜を外に連れ出すのを反対していたからだ。 「今でも外に出すのは心配ではありますよ?でも、外に出ることで良い刺激を受ける場合もあるってわかったし……今のままじゃ何も変わらないから……」  変わらないわけじゃない。  雪夜の状態は少しずつ変化している。  それはわかっているが…… 「そうだな……ん~、どこがいいかなぁ……」  浩二が腕を組んで軽く首を傾げた。 「よし、久々にやるか!」  斎の一声で、兄さん連中の『第32回 雪ちゃんと行く!わくわく☆秋のお出かけ大作戦!を考えよう』の会議が始まった。   「って、ちょっと待ってください。何ですかそのタイトルと数字は!?」  タイトルも気になるけど、32回って!? 「あ?だから、俺らは前から雪ちゃんとお出かけすることをいろいろ考えてたんだよ!」 「へ?」 「その結果が雪遊びと花見なんだよね~!」 「え、あれって突発的に思いついたとかじゃなくて?」 「失礼なやつだな!めちゃくちゃ議論を重ねた上での、候補のうちの二つだっつーの!」 「……え……えええええっ!?」  マジか!!  てっきり、たまたま思いつきで連れ出そうとしたんだと…… 「そりゃまぁ、さすがにあれだけの大雪が降るとは思ってなかったぞ?」 「ですよね!?だって、あれだけ降るのは珍しいですし……」  別荘は山の中なので、毎年雪は降る。  が、あの時のような大雪が降るのは珍しいのだ。 「うん、だから、スキー場にでも連れて行こうかって話は出てたんだよ」 「スキー場……」 「おい、ユウ。今までのやつ出してみろ」 「はいはーい。え~とね……ざっとこんな感じだね」  裕也がタブレットに今までの会議で出た案を出してくれた。  ・水族館は海で溺れたことを思い出してしまうかもしれないからまだ無理。  ・動物は?  ・水族館は無理でも、動物園なら大丈夫?  ・遊園地は精神年齢的に無理か?  ・地味にアトラクションの音も大きいし、絶叫マシンとかから悲鳴が聞こえるのでダメ。  ・人の多い場所も無理。かと言って自然の多い場所も無理。  ・開けた場所なら大丈夫かも?  ・高原のような、大きい木が少ないけど自然に囲まれている場所は?  ・高い場所は大丈夫なのか?  ・雪遊びは?スキー場とか……  ・お花は?そうだ!花見しよう!でも、木がいっぱいだから無理?――    あれ?意外とまともに議論してる……  夏樹は今までの備忘録に目を通しながら、気になるものを見つけた。 「動物園……」 「あぁ、雪ちゃん動物好きだろ?動物は癒し効果もあるって言うし、動物園とか、動物と触れ合える系の所ならどうかな~って」 「なるほど……いいかもしれませ……っ雪夜ぁっ!!」 「っなっちゃん!!」  斎たちと話している最中、夏樹は突然顔を上げて室内に向かって大声で叫んだ。  同時に裕也も叫んだ。 「ん?」  斎と浩二が驚いて顔を見合わせたが、夏樹は説明する前に室内に飛び込んでいた。 ***

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