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夜明けの星 7-9(夏樹)
“小動物ふれあい広場”に来て10分後……
「ほわぁ~~~っ!!なちゅしゃん!みてみて!ふわふわぁ~~!!」
天使がふわふわのかたまりを抱いて笑っていた。
――……というのを夏樹たちは想像していたのだが……
***
小動物とのふれあい広場には、うさぎやハムスター、モルモット、フェレットなど、定番の可愛らしい小動物がたくさんいた。
その中で雪夜のお気に入りは……
「かわい~ね~!むちむちよ~!」
「うんうん、可愛いねぇ!!はい、雪夜~!こっち向いて~!」
夏樹は先ほどからひたすら写真を撮りまくっていた。
「は~い!あ、まって!ほら、あっちむいて~?」
雪夜が一生懸命動物の向きを変えようと奮闘する。
「あ、いいよいいよ、(雪夜がメインだから)そのままで大丈夫だよ。(雪夜は)そのままで十分可愛いからね~!」
「おい、ナツ。心の声がダダ洩れだぞ」
「えっ!?」
隣で見ていた玲人 が、呆れたように笑った。
「それにしても……雪ちゃん、かなり気に入ったみたいだな」
「あ~……はい、そうですね」
「ぁっ!まってぇ~!ぶぅしゃん、おいで~!」
ふわふわの可愛らしい動物がたくさんいる中で、なぜか雪夜が気に入って自分から抱っこしようとしたのは……ミニブタだった。
ふわふわもふもふ感ゼロっっ!!
いや、可愛いよ!?
ミニブタって意外と愛嬌のある顔してるし!!
それに雪夜が抱っこすれば何でも可愛いし!?
「雪夜~、こっちにうさぎさんいるよ~?」
「うしゃにしゃんもかわい~ね~」
「可愛いよね~。ほら、ふわふわだよ~?触ってごらん?」
「……ぶぅしゃんがいい」
「こっちはダメ?」
「……ぶぅしゃん……」
「そかそか、わかった。いいよ、雪夜はぶたさんがお気に入りなんだね」
雪夜は、夏樹がうさぎやモルモットを抱っこして見せると、可愛いとは言うけれど、抱っこどころか触ろうともしない。
ふわふわは嫌いなのかな?
それとも、ふわふわ系のはみんなヒツジと同じように何かが雪夜の予想外だったとか?
気持ちいいんだけどな~、ふわふわ……
ふわふわ系の何が気に入らないのかわからないが、とりあえず、ミニブタのことはやけに気に入ったらしく、さっきから追いかけて抱っこしようと頑張っていた。
まぁ……雪夜が楽しそうだからいいか!
夏樹は、もし雪夜が小動物もダメそうなら、今日はもう帰ることも考えていた。
いろいろとプランを立ててくれた兄さん連中には悪いが、今日のお出かけは雪夜が主役だ。
雪夜が楽しめることが一番で、無理をさせることが目的ではない。
でも、これなら……もうしばらくいても大丈夫そうかな~?
夏樹は、笑顔でミニブタを追いかける雪夜にホッとしながら、携帯を構えると撮影ボタンを押した。
***
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