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夜明けの星 7-10(夏樹)

 それにしても……ふわふわの動物を抱っこした雪夜は可愛いに決まっているので、ぜひとも写真に収めたかったんだけどな~…… 「ぅ~ん、ふわふわ気持ちイイんだけどな~……」  夏樹が抱っこしていたうさぎに頬ずりをしていると、急に背後からドンっと衝撃が来た。 「ぅおっ!?……え、雪夜!?なに!?どうしたの?」  しゃがんでいた夏樹の背中に雪夜が勢いよく抱きついてきたので、衝撃に驚いて夏樹が抱っこしていたうさぎが逃げて行ってしまった。 「……めっ!!」 「ん?ぶたさんに逃げられちゃった?」 「ん゛~~~っ!!」  雪夜が唸りながら夏樹の背中にグリグリと顔を擦りつけてくる。  よくわからないがご機嫌斜めだ。 「なぁに?どうしたの?そこじゃお顔見えないよ。前においで?」  いつもならこう言えばすぐに前にくるのだが……雪夜は珍しく背中にしがみついて離れなかった。 「もう飽きちゃった?他のところに行ってみる?」 「ん~ん……ぶぅしゃんがいい」 「ぶたさんがいいの?あ、ほら、こっち来てるよ。ぶたさん抱っこする?」 「……ぁぃ……」  ぶたに逃げられたからへこんでるのか? 「あの~、雪夜?これじゃ夏樹さん、ぶたさん抱っこ出来ないよ?」  ミニブタを捕まえようと手を伸ばしたが、雪夜が背中にずっしりともたれかかってきているので、それ以上ミニブタに近付けない。 「い~の!」 「ぶたさん抱っこしないの?」 「ないの!」  さっき抱っこするって言ってたのに!?   「ほら、雪ちゃん。ぶたさんだぞ~!」  動けずにいる夏樹に代わって、玲人がミニブタを捕まえてきてくれた。 「ぶぅしゃん!」 「雪ちゃん、こうやって抱っこすればいいんだってさ」  玲人がスタッフから教えてもらった抱き方を雪夜に教えながら抱っこさせると、ミニブタが大人しく雪夜に抱っこされた。   「ふぉぉおおお!!なちゅしゃ!みてみて!ぶぅしゃん!!かぁ~い~ね~!!」 「ん?あ、うん。上手に抱っこ出来たね!!あ、待って、写真撮らせて!」  急にまたテンションが上がった雪夜に若干戸惑いつつも、写真を撮ることは忘れない。 「よし、いっぱい撮れた!」 「見事に雪ちゃんメインだな」 「当たり前です」  ミニブタも一緒に写してはいるが、夏樹的には雪夜が撮れればいいので、ミニブタは正直どうでもいい。 *** 「それにしても、なんで他の動物はダメなんだろ……」    撮った写真を整理しながら夏樹が呟くと、隣で玲人がクスッと笑った。 「あぁ、ダメってわけじゃなくて……」 「え?」 「雪ちゃん、嫉妬してんだよ」 「はあ!?」  夏樹は思わず眉間に皺を寄せて怪訝な顔で玲人を見た。 「さっきだって、雪ちゃんはせっかくミニブタ捕まえてたのに、ナツがうさぎに頬ずりしてるのを見て、慌ててミニブタを置いてナツに突撃しにいったんだ。いや~面白かったぞ~?あの時の雪ちゃんの顔。“ム〇クの叫び”みたいな顔してたぞ」  玲人が軽く眉を上げて、思い出し笑いをした。  ここにいる動物は怖くないよ、と雪夜にアピールするために、夏樹が抱っこしてみせていたのだが……どうやらそれが気に入らなかったらしい。  俺のプレゼンが逆効果だったってこと!?  え~……マジか~……  でも、そうか……、それならさっきの雪夜の態度も納得できる…… 「って、玲人さんひどい!!何でその時の写真撮ってないんですか!?俺も見たかったぁ~!!」 「一瞬なのに撮れるか!」 「あ!……じゃあ雪夜がミニブタを気に入ったのって、俺が抱っこしてなかったから?」  夏樹は、雪夜に抱っこさせたいと思っていたふわふわの動物ばかりをプレゼンしていたので、ミニブタはノータッチだった。 「いや、あれは普通に気に入ってると思うぞ。他の動物も実は結構気に入ってるみたいだ。ただ、触ろうとしないのは、やっぱりナツの態度が原因だろうな。特にうさぎはナツがやたらと抱っこして可愛い可愛いって連呼してたから……」 「あ~……」 「まぁ、たとえ相手が動物でもナツを渡したくなかったんだろ。雪ちゃんはナツに関しては独占欲強いからな~」  え、じゃあ雪夜は……俺がうさぎを愛でてるのを見て、うさぎに俺を盗られるとでも思ったってこと!? 「こらこら、ナツ。顔がにやけてるぞ」 「え!?」  玲人に言われて慌てて表情を引き締めたが、すぐにまた表情が崩れてしまいそうになる。  だって、雪夜が嫉妬心や独占欲を見せるのなんて、レアだし!!  っていうか、動物に嫉妬するって何なのっ!?  ヤバい、予想外な理由過ぎて……萌え死ぬ……!! 「ぶはっ!……はははっ!」  夏樹は、結局(こら)えきれずにしばらく爆笑した。 ***

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