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夜明けの星 7-11(夏樹)

「なちゅしゃ?」  爆笑している夏樹に気付いた雪夜が不思議そうな顔をしながら戻って来た。 「雪夜~!おかえり~!」 「!?……あい!」  夏樹がぎゅっと抱きしめると、雪夜が嬉しそうに抱きつき返して来た。 「雪夜、何でうさぎさん抱っこしないの?」 「……ぶぅしゃんがいい」 「うん、じゃあ、夏樹さんもミニブタさん抱っこしていい?」 「ダ、ダメっ!!」 「え~?じゃあ、雪夜を抱っこするのは?」 「い~よ?」 「それはいいの?う~ん、それじゃあ、ミニブタを抱っこしてる雪夜を俺が抱っこするのは?」 「!?……ぅ~~~……?」  雪夜が首を傾げつつ考え込んだ。 「ごめんごめん、ちょっと難しかったね」  まぁともかく、玲人(れいじ)の読みは当たっていたらしい。 「それじゃあ、夏樹さんが一番大好きな子を抱っこしてもいいですか~?」 「ダメッ!!」 「え、だめ!?」  夏樹が顔を覗き込むと、雪夜がちょっと頬を膨らませながら目を逸らした。 「だめなんだ?」 「……ぅ……ぅしゃにしゃん、だっこ……ぃやん……」  雪夜が少し気まずそうにうつむいて、指を弄りながら呟く。  あれ、待って?雪夜の中で、俺の大好きな子=うさぎ、なの……? 「そっかぁ、抱っこしたかったんだけどな~……一番大好きな子……」 「……っ」  夏樹が身体を起こすと、雪夜がハッとしたように顔を上げた。  次の瞬間、雪夜の顔から表情が一瞬スッと消えて、ふっと泣きそうな顔で笑った。  あ……マズい……この表情は…… 「ごめしゃい……だっこいいよ!」  雪夜が急に意見を(ひるがえ)した。  この表情は、以前の雪夜が自分の気持ちを押し込めて、夏樹に嫌われないように無理やり笑っていた時の表情と同じだ。  雪夜が夏樹にあの表情を見せるのは久々だったので一瞬冷水を浴びたような気持ちになった。  どこだ?  雪夜が自分の気持ちを出しちゃダメだと思った瞬間……  俺が身体を起こしたから、そのまま離れていくと思った?―― 「ゆきや……ぶぅしゃんだっこね……ぶぅしゃ~ん!」 「はいはい、ちょっと待った!!抱っこしていいんでしょ?」  夏樹は、ミニブタを探すフリをしながら夏樹から離れようとした雪夜の腕を掴んで軽く引き戻した。 「い~よ!どうじょ!」  夏樹の手を振り払おうとしながらちょっとヤケクソ気味に言う雪夜の様子に、口元が綻んだ。  雪夜がまだ気持ちを隠しきれていないことに少し安堵する。 「よし、おいで!」 「ファッ!?」  夏樹が雪夜を抱き上げると、雪夜が驚いた顔をした。  潤んだ瞳を大きく見開いて、夏樹の顔をじっと見つめて来る。   「なぁに?大好きな子抱っこしてもいいんでしょ?」 「……ゆきや?」 「うん、そうだよ。俺は雪夜が大好きだよ~!っていつも言ってるでしょ?」 「なちゅしゃ……ぅしゃにしゃんかわい~ねって……」 「んん゛、あ~うん、うさぎさんたちも可愛いけど、一番可愛いのは雪夜だからね?俺にとって一番可愛いのも一番大好きなのも雪夜だから――」  っていうか、なんで俺は浮気したのがバレて言い訳してるヤツみたいになってんのかな……?  しかも、浮気相手はウサギってどういうこと?  雪夜に話しながらふと我に返って笑いが込み上げてきたが、ここで笑うと雪夜の機嫌が悪くなりそうだったので必死で堪えた。  そんな夏樹の代わりに玲人が隣で爆笑していた。 ***

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