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夜明けの星 7.5-11(夏樹)

 瀬蔵(らいぞう)たちが帰ると、とりあえず一旦お茶休憩をすることになった。 「しゃんたしゃん、きたよね~!となかいしゃん、おはなししたね~!」 「うんうん、良かったなぁ」 「しゃんたしゃん、おひげくるくるだったよ!」 「そうだな~、もじゃもじゃだったよな~」 「もじゃ?……もじゃもじゃ~!おもしろ~い!――」  雪夜が嬉しそうに話すのを佐々木たちや菜穂子たちがニコニコしながら聞いていた。  その一方で…… 「で、一体どういうことなんだ?」  兄さん連中が浩二を取り囲む。 「いや、俺もびっくりしたんだってばよ!着替え終わってこっちに来ようとしてたら、車が入って来たのが見えて……」  この別荘に来るのは、詩織(しおり)と親密な関係の人間だけだ。  だが、今この別荘にはそのほとんどが集まっている。  来ていないのは……今日来るはずのない人間だ。  まさかと思いながら様子を窺っていると、玄関のカギを開けて入って来たのはあの三人だった。  こんなところに瀬蔵(組長)たちがいることがどれだけ大事(おおごと)なのかは浩二でもわかる。  瀬蔵たちは、驚いて叫びそうになった浩二の口を即座に塞いで母屋のリビングに連れていき、サンタの衣装を剥ぎ取った。  瀬蔵がサンタに着替えている間、どこから出したのか詩織と愛華はトナカイに……  そして、すっかりご機嫌な恰好になった三人は浩二に向かって「すぐに迎えが来るはずだけど、せめて1時間くらいは粘るように。」と言い置いて娯楽棟へ向かったらしい。  1時間くらいは粘れ……つまり、ここで引き留めて置けということだ。  瀬蔵たちの読み通り、30分程してそれぞれの組の幹部連中が迎えに来たのだが、浩二は1時間は粘れと言われていたので、幹部連中を母屋のリビングに招いて茶を出しながらなんとか引き留めようと奮闘していたらしい。   「俺だいぶ頑張ったんだぞ!?向こうでずっとあいつらの愚痴や泣き言を聞いてやって……」  組長同士が仲がいいので、幹部同士もまぁそれなりに仲がいい。  幹部連中は、それぞれの若頭が組長代理で場を繋いでいる間に、さっさと探し出して連れ戻すよう言い渡されたらしい。 「まぁ、どっちも若頭にはバレバレだったらしくて、別荘にいるはずだって言われたから迷わずここに来たんだってよ」 「ふ~ん……」  斎が軽く顎を撫でた。 「なるほど。これは……お前の仕業だな?ユウ」  斎の言葉に、兄さん連中が一斉に裕也を見た。 「え?何のこと~?」 「とぼけても無駄だぞ。だいたい、瀬ちゃんたちが来るタイミングが良すぎるんだよ。それに、別荘に入って来るなり浩二から衣装を剥ぎ取って着替え始めたんだろ?あまりにも手際が良すぎる!つまり……内通者がいるってことだ。瀬ちゃんたちに連絡するやつなんてお前くらいしかいないだろ?」 「ひど~い!みんな僕を疑うの!?僕がそんなことすると思う!?」 「「思う!!」」 「ちょっと~!そんなにみんなで言わなくても……まぁ、僕なんだけどね」 「やっぱりな。ったく、いくら面白そうだと思っても、正月に呼び出しちゃダメだろ~?……あれでもあの人達、組長なんだぞ?」  斎の言葉に、「そうそう、な」と晃たちも大きく頷いた。 「面白そうだとは思ったけど、僕が呼び出したわけじゃないよ~?愛ちゃんたちが、どうしてもって言うから~、サンタ登場の時間帯だけ教えてあげたんだよ~。でもちゃんと若頭たちにも連絡入れてあげたんだからえらいでしょ~?」 「「はぁ~……」」  悪びれる様子のない裕也に、みんなが一斉にため息を吐いた。  でもまぁ、瀬蔵たちはハチャメチャではあるが、さすがに自分の立場はわかっているので、仕事を放り出してきたわけではないはずだ。  なので…… 「……まぁいいか。俺らが心配しても仕方がないしな」 「よ~し、コーヒー飲んだらプレゼント交換するか~!」 「あれ、そういえば……俺はもうサンタの恰好しなくていいのか?」 「もうしなくていいぞ。だって、瀬ちゃんサンタがまた来年って言っちゃったからな。それなのにまたコージがサンタの衣装着て出てきたら、雪ちゃんが混乱しちゃうだろ」 「あ~、それもそうか……ちょっと残念だな」  サンタの恰好にノリノリだった浩二は、残念そうに頭を掻いた。 「俺は結局、サンタの恰好して追いはぎにあっただけか……」 「……ブハッ!」  浩二がしみじみと呟いたので、みんなが思わず吹き出した。 「あははは、サンタが追いはぎにあうって、ヤバいな~」 「だって、追いはぎだろ~?」  間違ってはないけれども…… 「なちゅしゃ~ん!」 「おっと……あ~、そういえば、あれってどうなったんだっけ?」 「あれ?あ~、あれね?え~っと……」  夏樹の背中に雪夜がくっついてきたので、兄さんらが急いで話の内容を変えた。  が、全然意味不明の会話になっていて、ちょっと笑える。  って何だよ!? 「どうしたの?雪夜。ココア飲み終わった?」 「あのね~、ここあ、まだよ!えっとね~、しゃんたしゃんのおひげがね~、もじゃもじゃだった~!」 「うんうん、もじゃもじゃだったねぇ」  夏樹は雪夜を抱き上げて話を聞きながら、兄さん連中から離れた。 ***

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