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夜明けの星 7.5-12(夏樹)
「なつきしゃん……おきてぇ~……」
翌朝、夏樹は雪夜の押し殺した囁き声に起こされた。
あれ?おかしいなぁ……
予想では昨日みたいに嬉しそうな声が聞こえると思ったのに……
寝たフリをしていた夏樹は、予想外の反応にちょっと落胆しつつ目を開けた。
「ん?おはよ~。どうしたの?」
「あのね、あれ……」
ちょっと困惑顔の雪夜が、内緒話でもするように夏樹の耳元で声を潜めながら自分の枕元を指差した。
そこには、大量のプレゼントが置かれていた。
雪夜が起きる少し前に、みんなが置いていったものだ。
「うん、どうしたの?」
「あのね、ゆきやがね、おきたらね、あったの。ほんとよ?」
「うん」
「あのね、どうしよう?」
「ん?」
「しゃ……サンタさん、いっぱいおとしたの。こまってるよ?」
「あ~……」
どうやら目を覚ましたら大量のプレゼントに囲まれていたので、雪夜の分のプレゼントを置く時にサンタがいっぱい落としていってしまったと思ったらしい。
その上、今頃さぞかしサンタが困っているだろう……と、サンタの心配をしてあげているのだ。
やだもう、うちの子ったらマジ天使!
俺だったら、ラッキー!で済ましてるな……
はい、心が穢 れまくってますが何か!?
って、そんなことはさておき……
「んん゛……ああ、うん。大丈夫、それはね、全部雪夜のものだから。サンタさんだけじゃなくて、みんなから雪夜へのクリスマスプレゼントだよ」
「じぇんぶ、ゆきやの?」
「そうだよ。ほら、メッセージがついてるでしょ?え~と、これはね~……斎さんからだな」
プレゼントに挟まっているメッセージを一つ一つ読んであげると、ようやく安心したように笑った。
「開けてごらん?」
「いいの!?」
「雪夜のだからね」
雪夜はプレゼントをじっと眺めると、キョロキョロと寝室の中を見回した。
「ん?どうかした?」
「あのね、あの……パシャってね……」
「ああ、撮っておくの?いいよ、これで撮ってあげる」
包装紙を破る前に写真に残しておきたかったらしい。
プレゼントの真ん中に雪夜を座らせて、夏樹の携帯で数枚撮って見せると、満足したように頷いた。
「なつきしゃん、ありがとう!」
「うん、それじゃ開ける?」
「え~と……あ、おくしゅりのむ!」
「え?あ、うん。先にお薬飲むの?」
「うん」
「プレゼントは見なくていいの?」
「うん」
え、見ないの!?
嬉しくなかったのかな?
俺、何か間違えたか?
「あのね、え~と……ビリビリはあとで!」
「あとでビリビリする?」
「うんうん、あのね……」
雪夜は、嬉しすぎて、破けないと言った。
嬉しいから、開けずにしばらくこのまま眺めていたい。と……
「そか……うん、わかった。雪夜が開けたい時に開ければいいよ」
夏樹は、雪夜が喜んでくれているとわかって、少し安心した。
雪夜がもらったプレゼントなのだから、雪夜のタイミングで開けるのが一番だろう。
きっと兄さん連中は今頃、雪夜の喜ぶ声が聞こえて来るのを今か今かと耳を澄ませて待っているはずだけど……
まぁ、兄さん連中も、雪夜がすぐに開けたくないと言った理由を聞けば、納得するだろう。
夏樹は、少し苦笑しつつ、雪夜を抱き上げて寝室を出た。
***
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