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夜明けの星 7.5-14(夏樹)

 1月3日の朝。  それは、浩二の一言から始まった。 「正月と言えばやっぱり……初詣だよな~……」  確かに正月だし、正月と言えば初詣というのもわかる。  が…… 「そうだな」 「よし、雪ちゃん初詣行こうか!」 「はふふぉ~へ?」  パーティー料理の余り物のポテトサラダと薄くスライスしたベーコンとチーズを乗せて焼いたパンを食べていた雪夜が、浩二の言葉に首を傾げた。 「ちょちょちょっと何言ってるんですか!?正月の神社や寺なんて人混みだらけのところに行けるわけないでしょう!?」  夏樹は慌てて間に入り、浩二をテーブルから離れた場所まで引っ張って行き雪夜に聞こえないように浩二の耳元で静かに怒鳴った。 「わかってるっつーの!だから、人が少ないところに行けばいいんだろ?日本は神社仏閣だらけなんだぞ?例え正月でも人ゴミに溢れてる場所ばかりじゃねぇよ」 「それはそうですけど……」 「それなりに大きくて、正月でもあんまり人が来てなくて、あんまり山の中っぽくねぇところならいいんだろ?」 「そんなところあります?」 「あるって!なぁ、イッキ?」 「ん~?あぁ、そうだなぁ……いつものとこならいいんじゃね?」 「あ~……あそこな」 「たしかに!!」  兄さん連中が勝手に納得して話を進めていく。 「ちょ、だから、あそこってどこ!?――」 ***  昨日は一日中、雪夜のクリスマスプレゼントの開封式で過ぎて行った。  包装紙で包まれているプレゼントは全体の半分程で、残りの半分は不織布などでできた袋に入っていた。  夏樹は、じっと待っている雪夜に袋入りのプレゼントを渡すと、包装紙からテープを剥がすのは時間がかかるので先に袋に入っているプレゼントから開封していくよう促した。  袋に入っているものは、単にリボンでくくってあるだけなので、雪夜でもすぐに開封できる。 「――ナツ君?今のうちにちょっと隠れて包装紙破いちゃおうかな……とか考えてるでしょ?」  雪夜がプレゼントに大興奮している様子を微笑ましく見ていた夏樹に、菜穂子がボソッと耳打ちしてきた。 「えっ!?なぜそれを……じゃなくて、そ、そんなこと考えてませんよっ!?」 「テープを剥がしていくの面倒くさいって顔に書いてあるもの。でもね、破いちゃだめだよ?ちょっと離れたくらいだと破く音は聞こえるし、なにより、雪ちゃんにしてみればこの包装紙もプレゼントの中に入ってるんだから、それを破いたり捨てたりしたら……ナツ君のこと信用できない人だって思っちゃうかもよ?」  いやいや、こんな紙キレくらいで俺の信用なくなっちゃうの?まさかそんなことは……  と笑い飛ばそうとしたが、ちょっと冗談めかして言っているものの菜穂子の目は真剣だった。   「ぅ゛……わかりました……ちゃんと剥がします!雪夜のためなんだから頑張りますよ――」  はい、頑張りました。  全部のセロハンテープをキレイに(あと)も残さず、紙を破ることもなく剥がしましたとも!!  でももぅ、今度からみんなプレゼントは袋に入れるようにしてもらおうかな……   「はい、雪夜。包装紙はこっちにまとめて置いてあるからね」 「わあい!ありあと~!」  くるくると丸めた包装紙の束を両手に抱えて満面の笑みを見せた雪夜は、夏樹や菜穂子たちにペコッと頭を下げた。    うん、まぁ……雪夜が喜んでくれたからいいかな! 「どういたしまして!」 ***  みんなで回す交換用のプレゼントは、いつも全力でふざけた内容のものばかりなのだが、今年はどれが雪夜に当たってもいいように下ネタ系のものは禁止にしてくれたらしく、兄さん連中にしては可愛い系のプレゼントが多かった。  そんな中、雪夜に回って来たのは、卓上型スナックディスペンサーだった。  レバーを押すと一口分のお菓子が出て来る。  ガチャポンをしたことがない雪夜には新鮮だったらしく、大喜びだった。  レバーを押してお菓子が出て来るところを見るのが楽しいようで、お菓子を取り出してはみんなに配って回っていた。  一方、雪夜へのクリスマスプレゼントは、ボードゲームや知育玩具の他に、マフラーなどの防寒具も多かった。  冬の間は外出をしないと言う話だったはずなのに、こんなに防寒具がプレゼントされたことに驚く。  しかもなぜか見事に被らずに冬物の衣装が一式揃った。  まぁ、その時点で、もしかして……とは思っていたが……  たぶん、兄さん連中は最初から初詣に雪夜を連れ出すつもりだったのだろう。   「雪夜、お外は寒いからね?これ着て行こうか!」 「あい!」  夏樹は雪夜に、昨日みんなからもらったクリスマスプレゼントを着せた。  ふわふわ帽子から靴まで、全身クリスマスプレゼントだ。  バラバラに入っていたわりに統一感があるところを見ると、みんなで一緒に買いに行ったか、センスのある斎、晃、裕也あたりが買いに行って選んだものを後でみんなで分けたのかもしれない。  兄さん連中なら、ひとりで一式ずつでも余裕でプレゼントしてきそうなのに……上着だけ、帽子だけ、と分けていたのはちょっと意外だった。 「なちゅしゃ、かわいい?」  全身モコモコになった雪夜が、夏樹の前でペンギンのようにペタペタと歩きながらくるりと回った。 「うんうん、可愛い!」  これだけモコモコなら転んでもケガしないな! ***

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