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夜明けの星 8-1(夏樹)

 ――誰かが泣いてる……? 「ん~……雪夜?どうしたの?こっちおいで……」  夢現に誰かの泣き声が聞こえた気がして、目を閉じたまま雪夜に手を伸ばす。  パタパタと手で探るが、雪夜らしき温もりに辿り着けない。  夏樹は(おもむろ)に目を開けた。  あれ?いない……  トイレか?  時計を見るとまだ深夜だった。  暗闇がダメな雪夜のために常に灯りをつけているので、寝惚けていると一瞬時間がわからなくなる。 「雪夜~?」  様子を見に行くと、リビングに雪夜の姿があった。  雪夜はソファーでアルパカのぬいぐるみを抱きしめながら膝に顔を埋めていた。   「どうしたの?目が覚めちゃった?」 「……っ……」  夏樹が隣に座ると、雪夜はゆっくりと顔をあげて潤んだ瞳で夏樹を見た。  やっぱり泣いてたのか……   「おいで、怖い夢でも見ちゃった?」  珍しいな、怖い夢を見た時はいつも俺にひっついてくるのに……  雪夜が夜中にひとりでベッドを離れることなどほとんどない。  喉が渇いた時も、トイレに行きたい時も、普段なら夏樹を起こして一緒にいく。  夏樹は少し違和感を覚えつつも、雪夜に両手を広げた。  怖い夢を見た時は、夏樹が抱きしめてあやしてあげれば落ち着く。  いつものことなので、もう慣れたものだ。  だが、この日の雪夜は様子が違った。 「っ……」 「ん?」 「――……」 「……え……?」 ***

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