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夜明けの星 8-2(夏樹)

 兄さん連中は、1月以降も事ある毎にみんなで集まり、雪遊びやお花見以外にも、月に1~2回はどこかに遊びに行く計画を立ててくれて外出の機会を作ってくれた。  雪夜をみんなに取られてしまうので夏樹としてはちょっと複雑なのだが、実際問題、今の雪夜の外出は夏樹だけではなかなか難しいので、兄さん連中が一緒に連れ出してくれるのは助かる。  雪夜は、みんなでワイワイ言いながら出かけることに慣れて来て、徐々に夏樹たち以外の全然知らない人たちもいる場所にも行けるようになってきた。  さすがの兄さん連中でも、どこでも貸し切りに出来るわけではないので、貸し切りが出来る場所となると限られてくる。  だから、雪夜が夏樹たち以外の人たちがいても怖がらなくなったことで、出掛けられる幅が広がった。  もちろん人が多い場所は避けているが、どうしても兄さん連中と外出をすると、目立つ。  一人ずつでも目立つのに、それが群れているので悪目立ちするのは仕方がない。  だが、そんな集団に話しかけて来るような猛者(もさ)はなかなかいないので、ある意味安全なのだ。  ただ、かなり注目されるので、視線は痛い。  夏樹たちは注目されることに慣れているが、雪夜は大勢の視線に慣れていないので、不安にならないようにと兄さん連中が『周囲の視線を惹きつけ隊』と『雪ちゃんを守り隊』にわかれて雪夜に視線が集中しないようにしてくれている。  まぁ、人が多くなってくると雪夜はほとんど夏樹にしがみついて顔を伏せているので、夏樹的には嬉しいのだが……  リハビリ面では、外出するようになって歩くことが増えたし、詩織が誕生日プレゼントにとトランポリンを買ってくれたので、『跳ねる』動作も練習出来るようになった。  おかげでだいぶ体力も筋肉量もついてきて、下半身が安定してくるようになった。  何より……トランポリンの上でめちゃくちゃ楽しそうにぴょんぴょん跳ねている雪夜は、可愛い。  兄さん連中もぴょんぴょんしている雪夜を見るためだけに、わざわざリハビリを覗きにきていた程だ。  言語訓練も頑張っていて、ほとんど普通に会話出来るようになった。  とはいえ、テンションが上がってくるとやっぱり滑舌が悪い。  滑舌の悪い雪夜に萌えまくりだった兄さん連中が、たまにそれを聞きたくてわざと雪夜のテンションが上がるようなことをしてくるのが困りものだ。  そりゃね?俺だって……  「なちゅしゃん」が懐かしいなって思うこともあるよ……?  うん、舌ったらずな雪夜は可愛いし、何よりテンションが上がっている雪夜も可愛い!  だから結局は俺も兄さん連中を止めないけどね!  いろんな所に出かけて、いろんな経験をして、雪夜はよく笑うようになっていた。  最初は怖がるし不安がるが、みんなが一緒にいてくれるので安心するのか、挑戦してみようとすることが増えた。  兄さん連中がいろいろと気遣ってくれているおかげで、結構いろんな場所に行っているにも関わらずトラウマもほとんど出ていない。  このまま、雪夜が回復していけばいい。  イヤな記憶など忘れて、楽しい記憶でいっぱいになればいい。  みんながそう思っていた――…… ***

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