534 / 715

夜明けの星 8-33(夏樹)

 佐々木たちに任せておけば大丈夫だな……  雪夜も夏樹といる時より素直に感情を出せるし、元に戻ってからの違和感や不安も佐々木たちには話せるだろう。  そして、佐々木たちはそれをちゃんと受け止めてくれる。  やっぱり佐々木たちに来てもらって良かったな……  安心した夏樹は、室内を覗き見するのを止めて仕事に戻った。  仕事をしている間も、寝室からは、泣き声やら笑い声やらいろんな声が聞こえて来ていた。   *** 「夏樹さ~ん」 「お?どした?」  相川の呼ぶ声にパソコンの画面から顔を上げた。 「交替の時間~」 「ん?」 「雪夜寝そう」 「あぁ、寝たら熱測ってやって。熱が高いようなら冷却シート貼って……」 「まだ寝てないよ。雪夜が呼んでる」 「……え?誰を?」 「他に誰がいるんだよ」  相川が呆れたように夏樹を指差した。 「あ、そう……だよな。わかった」  佐々木たちといるのに自分が呼ばれるとは思わなかったのでマヌケな質問をしてしまった。  慌ててパソコンを閉じて寝室に向かった。 「――雪夜?どうしたの?」  雪夜と佐々木はベッドの上で座り込んでいた。  夏樹はベッドに腰かけて俯いている雪夜の顔を覗き込んだ。 「ぅ~~……なちゅ……しゃん……いたぃ……」 「あらら。目が赤くなってるね」  だいぶ泣いたらしい。  雪夜の目は赤く充血して瞼も腫れていた。  しかも眠たくなったせいか、その目をゴシゴシと擦っていた。   「相川、ちょっとタオル冷やしてきてくれ」 「はいはーい!」 「ごめん、雪夜何回か大号泣したから……」    佐々木がポリポリと頭を掻いた。   「いや、それは別にいいんだけど……って、こらこら、雪夜、目擦らないで。余計に痛くなっちゃうよ?……はい、ちょっとこっち向いて?目薬入れようね」 「……ぁぃ」  ほとんど目を閉じた状態で雪夜が頷く。    これは……もう半分寝てるな。  佐々木たちが来てくれたから、ちょっとテンションが上がりすぎたかな…… 「俺らも久々で一緒になって盛り上がっちゃったから……疲れたのかもしれない」 「ん?あぁ、ちょっと寝かせた方がいいな。雪夜、横になろうか」 「ん~~……」 「雪……ぉっと……」  夏樹がポンポンと枕を叩いて横になるように促すと、雪夜が倒れかかるように夏樹の胸元に抱きついて来て顔をグリグリと押し付けてきた。  寝ぼけているからだとは思うが、甘えてくれるのは素直に嬉しい。  でも、顔を擦りつけると目の腫れが酷くなっちゃうんだよな~…… 「んん゛……雪夜、目痛くなっちゃうから……」  夏樹は自分の胸元にある雪夜の顔を泣く泣く引きはがそうとした。  ……が、雪夜はギュっと抱きつくと、唸りながらもっとグリグリと押し付けてきた。  どうやら離れたくないらしい。 「はいはい、わかった。わかったから!う~ん、じゃあ、もうちょっと上おいで」  思わずニヤケそうになるのを必死に堪えて、雪夜の頭が夏樹の肩に乗る位置まで抱き上げる。    熱は思ったよりも上がっていないみたいだな。 「よしよし、少し眠ろうか。大丈夫、佐々木たちはまだいるからね。また起きたらいっぱい話せるよ」 「……ぁぃ」  背中をトントンと軽く撫でると、すぐに寝息が聞こえて来た。  もう限界だったらしい。  うん、やっぱり寝ぼけてたんだな……  でもまぁ、寝ぼけている時だけでも雪夜から抱きついてくれるだけマシかな。  夏樹は小さく息を吐くと、ふっと苦笑しつつ雪夜を抱きしめた。 ***

ともだちにシェアしよう!