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夜明けの星 8.5-20(夏樹)

「えっと……あの……ななな夏樹さん!?」 「なぁに?」 「あああの、これは一体……」  風呂から出た夏樹は、ベッドで雪夜を抱きしめていた。 「実践中」 「ふぇ?」 「雪夜の記憶では、俺と裸で抱き合ってると、気持ち良くて幸せな気分になってたんでしょ?どうですか?」 「ああああの、き、きき緊張してそそそそれどころじゃ……せめて服っ!服を~~~……っ!!」  照れと緊張でいっぱいいっぱいになっている雪夜が、服を求めて手をバタつかせる。 「え~?実際に俺と裸でギュッてしたら気持ち良くなかった?そっかぁ~、まぁそういうもんだよね~」 「ちがっ、違います!き、気持ち良いですよっ!?」  夏樹がちょっとしょんぼりしながら身体を離すと、雪夜が慌ててギュっと抱きついてきた。 「気持ちいいの?」 「ふぁぃ!!」 「そかそか、じゃあこのままもうちょっとギュッてしてようね!」 「ふぇぇ~~~……!?」   ***  数十分前―― 「あの……夏樹さん、すみません……俺、記憶違いだったみたいで……ちゃんと思い出してもないのに夏樹さんや佐々木に無理言って……結局二人を困らせちゃって……本当にごめんなさい!」  夏樹が頭を抱えているのを見て、雪夜が申し訳なさそうに俯いた。 「雪夜、違うよ!別に記憶違いじゃないんだよ?ただ……その、ちょっと(あいだ)が抜けてるだけだから」  ものすご~~く重要な部分がね!? 「間……ですか?」 「うん、ちょっと記憶のピースが抜けてるんだよ。雪夜は俺とえっちをして、気持ち良かったっていうのは覚えてるんでしょ?」  肝心の部分は抜けているようだが、「裸で抱き合うと気持ち良かった」この記憶がセックスのことだとわかっているからこそ、夏樹とシたいと思ったわけだし…… 「……でもあの……あれはえっちのことじゃなかったのかも……だから、もういいです……!ごめんなさい……変なことお願いしちゃって……」  雪夜が自信なさげに視線を泳がせ、チラッと夏樹の股間を見て慌てて顔を両手で覆った。  いや、もっと自信持って!えっちのことで合ってるんだよ!?  っていうか、変なことってなに!? 「全然変じゃないよ!?」  お願いだから、俺の股間見て言わないで!? 「でも……」 「わかった。じゃあ、一緒に記憶のピース埋めていこうか。でも、お風呂を出てからね?ここで話すと風邪引いちゃうから」  夏樹は急いで雪夜の身体についたボディソープを洗い流し、風呂から出た。 *** 「――夏樹さん!?あの、き、記憶の……ぴぴぴーしゅを……埋めるんじゃ!?」 「ん?今してるでしょ?」 「……へ?」  そう言いつつも、風呂を出てからずっと裸で抱き合っているだけの夏樹に雪夜が戸惑った顔をした。   「裸でギュッてしてから、気持ち良くなるまでの間に何があるのか、実践中」 「こ、これがですか?」 「まぁ、もうちょっとすればわかるよ。他に覚えてることある?」 「え、ほ、他にですか!?えっと……えっと……」 「うん……焦らなくていいからゆっくり思い出してみて?」  夏樹は必死に思い出そうとしている雪夜のうなじを軽く撫でた。 「ふぁっ!~~~っな、夏樹さん!?何を……」 「あ、気にしないで?雪夜が思い出しやすいようにしてるだけだよ」 「へ?あ、は、はい……」 「ほら、緊張してたら思い出せないでしょ?身体の力抜いてごらん?」 「そんなこと言われても……」 「大丈夫、気持ち良くなることに集中すればいいんだよ」 「き、気持ち良くなること……?」  首を傾げる雪夜にフフッと笑いかけると雪夜を抱きしめてトントンと背中を撫でた。 「俺はね~……雪夜は温かくて柔らかくて肌もスベスベだから、こうやって裸でギュッてすると気持ち良くて好きだよ?」 「……な、夏樹さんの方が……あったかぃですよ……?」 「そう?」  夏樹が耳元で囁く度に、緊張して硬くなっていた雪夜の表情が少しずつ蕩けていく。  今の状態でも雪夜を落ち着かせる方法はいつものやり方で大丈夫らしい。 「他にはどんなところが好き?」  どさくさに紛れて聞いてみる。 「……なつきさん……いいにおい……する……」 「そう?ふふ……雪夜もいい匂いするよ?」 「……ちょっとドキドキする……」 「ちょっとだけ?俺はめちゃくちゃドキドキしてるけどな~……」 「……なつきさんも……ドキドキするの?」 「するよ~?好きな子とギュッてすれば俺だってドキドキしますよ~?」  夏樹は軽く眉をあげて、少し照れ隠しにおどけた顔で笑った。    面と向かってこんなこと言うの……思った以上に照れる……  子ども雪夜の時なら平気だったんだけどな~…… 「そかぁ……なつきさん、もっとぎゅっ……して?」  雪夜がふにゃっと笑って、可愛いお願いをしてきた。  ん?あれ?何かちょっと……リラックスさせすぎたか?  まぁ可愛いからいいか! 「……いいよ、いくらでも!!」    本当は、緊張をほぐすのも、セックスに持ち込むのも、それだけが目的ならさっさとキスして一回射精()かせてしまえば、手っ取り早い。  ただ、それでは雪夜が夢だと勘違いしてしまう可能性がある。  そもそも、セックスのやり方を完全に忘れてしまっている現状では、なし崩し的に抱くのは何の解決策にもならない。  ので、あえて、風呂を出てからは雪夜の口唇にはキスをしていない。  それに、まだ今は……たぶん体力的に一回射精()くのが限界だろうし……    だいたい、裸で抱き合っているこの状況。  どう考えても、セックスのことを忘れている雪夜よりも、煩悩まみれの夏樹の方がキツイ……  まぁ……ね……この数年間毎日のようにしてたから、何とかなってますけど?  本心としては……めちゃくちゃに抱き潰したい……!! ***

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