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夜明けの星 9-59(夏樹)
「俺ね……実は夏樹さんの匂いが大好きなんですよね……何か変態っぽいから今まで言えなかったんですけど……」
……ん?
「え~っと……うん、知ってるよ?」
「ええっ!?うそっ!?」
「ホント」
「ふぁっ!?」
雪夜が心底驚いたという顔で夏樹を見て来た。
そんな雪夜の表情につられて夏樹も同じように驚いた表情になる。
いやいや、そんなのだいぶ前から存じておりますが?
何なら、雪夜が自分で言ってたよ?
あ~、でもそういえば「夏樹さんの匂いがいい匂い」っていうのはよく言ってくれるけど、好きとは言ってないんだっけ?
いや、好きっていうのも言ってた気がするんだけど……
まぁ……不安定になってる時のこととかは雪夜は覚えてないしね~……
っていうか……俺に言ってなかったことってそれ!?
「し、知ってたんですかぁ~~……!?」
雪夜が情けない声を出して両手で顔を覆って俯いた。
どうやら、雪夜は夏樹に隠しているつもりだったらしい……
な~んだ……あ~!焦ったぁ~……
夏樹は大きく息を吐いて全身の力を抜いた。
何に焦ったのかは自分でもよくわからなくて一瞬モヤッとしたが……とにかくホッとした。
「すみません、変態みたいですよね……っていうか、変態ですね……呆れちゃいますよね……」
「そんなことないよ」
夏樹はフッと笑って、顔を隠している雪夜の両手を外した。
照れてる雪夜の表情も好きなんだよね……
「っあ……ぅ~~……!」
顔を隠していた手を外された雪夜が気まずそうに膝に顔を埋めた。
「ねぇ、雪夜。俺も好きだよ?雪夜の匂い。ってことは、俺も変態ってことでしょ?お互いさまだよ」
「でも……夏樹さんは変態じゃないです……」
ん~?
「あのね、匂いって身体と一緒で相性があるからね。お互いの匂いが好きで身体の相性もいいってことは、俺たちの相性って最高なんじゃない?」
「……え!?……相性……ですか?」
雪夜がチラッと夏樹を見て首を傾げる。
ちょ、なんでそこで首を傾げるかなぁ~!?
「え、俺との相性よくない!?」
「あ、いえ、あの、めちゃくちゃ気持ち良いです!!」
雪夜がパッと顔をあげ、食い気味に大きな声を出した。
「……ん?」
それって……
「……ぁ……ぇ……?」
一瞬の沈黙の後、雪夜の顔が真っ青になったと思ったら、徐々に真っ赤になって夏樹の手を思いっきり振り払った。
「いやあああああああああああっ!!!待ってっ!!間違いましたっ!!そそそういうことじゃないですよねっ!?今のは忘れて下さいぃいいいいいいい!!」
雪夜が叫びながら慌てて後ろに飛び退る。
いやいや、忘れるわけないよ!?
聞き逃さないよ!?
っていうか、そういうことですけどっ!?
「え、なになに~?今何て言ったの?」
雪夜が下を向いているのをいいことに、にやけ顔で雪夜に聞き返す。
「ななななんでもないですぅううう~!!!」
「もう一回言ってよ~」
「いいいやですぅうう!!!」
「イヤなんだ?え~……じゃあ、雪夜は俺と相性よくないって思ってるってこと?」
「わ、わかりません~~~っ!!」
前のめりになって雪夜の顔を覗き込もうとする夏樹の顔を、雪夜が必死に押し戻そうとする。
「……そっかぁ~……俺じゃダメか~……」
押してダメなら……というわけではないが、あまりグイグイいきすぎると雪夜が泣いてしまうので、夏樹は一旦元の位置に戻って収納扉にもたれかかった。
「え!?あ、あの、違っ……!」
「……ん?」
「あの……ダ……ダメじゃないです!好きです!大好きですっ!!夏樹さんじゃなきゃイヤですっ!!でもあの……相性って……よくわからな……」
夏樹が急に離れたので、どこかに行ってしまうとでも思ったのか雪夜が慌ててちょっと泣きそうな顔で夏樹の服を掴んだ。
そんな雪夜を安心させるように、軽く頭を撫でる。
「ありがとね。俺も大好きだよ」
まぁ、ね……身体の相性っていうのは複数との経験がないとわからないわけで……
雪夜は俺としか経験がないんだから、身体の相性がどういうものなのかわからないのは、当然と言えば当然……なんだけど……
「う~ん、そうだよねぇ……だったら……やってみようか」
「……ほぇ?」
「両想いでお互いの匂いも好きな俺らは、身体の相性もいいのか。俺は身体の相性もいいと思ってるけど、雪夜はわからないんでしょ?だったら、雪夜がわかるまでやってみようか!」
夏樹がにっこり笑いかけると、雪夜がポカンとした顔で夏樹を見上げた。
「ぇ……わかる……まで……?」
「うん。雪夜が俺との相性がいいってしっかり実感できるまでってことだね。よ~し、頑張るぞ~!」
そう言うと、夏樹は雪夜を抱き上げた。
身体の相性が良い=えっちが気持ち良いって教えてあげればいいだけなんだけど、どうせなら……ね?
「え、ちょ……夏樹さん!?あの、立てないんじゃ……」
「さっき雪夜チャージしたからもう大丈夫だよ」
「ええっ!?ああああの、夏樹さんっ!?待っ……あの、え、やってみるって……な、何を!?」
「何を?そりゃ身体の相性を確かめるんだから……することは決まってるでしょ?」
「……え……っち……?」
夏樹は返事をするかわりに、雪夜の首筋をペロリと舐めた。
「っぁん……っや、ま、待って!夏樹さん!?あの……い、今からですかっ!?」
「今からだよ。ちょうどこれからお昼寝するしね!ちょっと運動してからの方がよく眠れるでしょ?」
「う、運動って……ぇ、あの……ぇえええっ!?――」
雪夜のおかげでいろんな意味で元気になった夏樹は、その後、雪夜に負担をかけないようにじっくりと時間をかけて優しく丁寧に相性と愛情を確かめ合い、たっぷり汗をかいた雪夜は久々に薬なしで夕飯時までぐっすり眠ることが出来た。
――ほらね?両想いで匂いの相性も身体の相性も良いって、やっぱり最高でしょ?
***
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