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夜明けの星 9-71(夏樹)

――ってな感じで……」  夏樹は佐々木たちに連絡した経緯を話した。 「へぇ~……なぁ、最後の部分いる?」 「最後の部分は……惚気(のろけ)だな」 「惚気は省けっ!真剣に聞いちゃっただろっ!!」  佐々木がちょっと赤くなった顔をしかめて夏樹の肩をバシッと叩いた。 「ちょっとくらい聞いてくれても良くない!?焦って舌噛むとか可愛すぎるだろっ!?」 「それは確かに可愛いけど!!惚気なら雪夜からいっぱい聞かされてるからもう腹いっぱいなんだよ!!」 「……雪夜が?」  佐々木たちに一体どんなことを惚気ているのか気になるっ!! 「んで、つまり、雪夜がみんなに会いたいって?」 「雪夜が惚気てたのって俺?俺のこと?」 「それは置いといて……」 「戻して!!」 「置いとけっ!!話しが進まないだろっ!?」 「置いとけるかっ!めちゃくちゃ気になるっ!!」 「あ~もう!わかった。あとで話してやるから、とりあえず雪夜の話!」  夏樹が折れないので佐々木が折れた。 「絶対だからなっ!?」 「わかったって!!」 ***  雪夜は、別荘に来てくれた人たちみんなに笑顔で「ありがとう」と「大好き」を何度も伝えていた。  子ども雪夜から今の状態に戻った時にもみんなにお礼を言っていたが、今回はそれ以上に丁寧に何度も……  みんなは、遊びに来ただけなのになぜ雪夜にお礼を言われているのかわからず困惑しつつも、ニコニコ笑顔の雪夜につられて満面の笑みを浮かべると、大喜びで雪夜を抱きしめ「大好き」返しをしていた。  そして、決まってあとで夏樹がシメられた。 「雪ちゃんは相変わらず可愛いけど、様子がおかしい。何かあったのか?」 「何もないですよ。今はまだ……――」 *** 「だから、佐々木たちだけじゃなくて、兄さん連中にも愛ちゃんたちにも雪夜はそんな調子で……」 「みんなに「ありがとう」と「大好き」を言ってるのか……それはどう考えてもおかしいよな……?いや、お礼を言うのも愛情を伝えるのも別におかしくはないんだけど……わざわざみんなを呼び寄せてまで伝えるのが……」  佐々木だけじゃなく、みんなもその点が気になっているのだ。  もちろん、夏樹も…… 「夏樹さん、俺らに連絡する前に雪夜に理由を聞かなかったのか?」 「聞いてないよ」 「どうして?」 「みんなに会いたい、と思うこと自体は別に普通のことだろう?」 「まぁ、たしかに……」 「そりゃまぁ、雪夜がそんなことを口にするのは珍しいとは思ったけど、最初は普通にみんなに会いたいのかなって思ったんだよ」  しばらく兄さん連中が顔を出していなかったし、みんなが集まるイベントがなかったから、会いたくなったのかなって……  もちろん、翌日にはその考えが間違っていたことに気づいたけれど…… 「理由を聞いて雪夜が素直に答えてくれると思うか?」 「それは……答えないかもしれないけど……」 「そもそも雪夜は俺に「みんなに会いたい」って言ったわけじゃないからな。雪夜が呟いてるのを聞いて俺が勝手にみんなに連絡したんだ」 「あ、そうか……」 「でも、みんなに連絡したことは後悔してないよ」  雪夜の様子がおかしいのはわかっている。  みんなが雪夜を心配するのもわかる。  会いに来てくれた人たちみんなに「ありがとう」「大好き」を何度も伝えるなんて、まるで……  だけど、それなら余計に……みんなに連絡して良かったと思う。 「お願いします……夏樹さん、雪夜から絶対目を離さないで!俺の親友を――」  佐々木がいつになく真剣な顔で夏樹に頭を下げた。 「あぁ……わかってる」  夏樹がふっと微笑んで佐々木の肩を軽く叩いた瞬間、雪夜と相川の笑い声が近付いて来た。 「(あきら)~!?お茶まだぁ~!?」 「あ~、悪い、今用意する!」  佐々木は慌てて身体を起こすと、二人に背中を向けてお茶を用意した。 「あ、夏樹さんもそこにいたんですね!二人で何の話をしてたんですか?」  雪夜が無邪気に首を傾げる。 「ん?うん、ちょっと料理の話で盛り上がっちゃってね。雪夜、お昼ご飯は何がいい?」  夏樹は佐々木を隠すようにして立つと、雪夜たちに笑いかけた。 ***

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