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夜明けの星 9-91(夏樹)
雪夜は一度トイレに行って戻って来てからは、また何事もなかったかのように無邪気に笑っていた。
ハンバーグパーティーの話も、積極的に案を出してくる。
あれ?気のせいだったのかな……?
ただでさえ今日は台風のせいで朝から子ども雪夜と大学生の雪夜が中途半端に混ざって不安定だった。
決して雪夜の精神状態が良いとは言えない中、それでも夏樹の誕生日を精一杯祝おうと頑張ってくれていたのだ。
そう考えるとあの表情も不安定なせいで一瞬出て来ただけかもしれない。
うん、きっとそうだ!
夏樹は自分にそう言い聞かせ、気を取り直して、雪夜と過ごす時間を楽しんだ。
雪夜も機嫌よく笑っている。
俺の心配しすぎだったんだ……
ほらね?いつも通り……
雪夜から抱きついてくるのも、夏樹にもたれかかってきて甘えてくるのも……
夏樹と顔を近づけて満面の笑みでツーショット写真をたくさん撮らせてくれるのも……
ベッドでイチャイチャす……
「あの、ななな夏樹さん!な、なにかしてほしいことってありますか?」
「え?」
雪夜をベッドに押し倒し、首筋を愛撫しつつ服を脱がそうとしていた夏樹は、思わず手を止めた。
「あああの……しししてほしいことっていうか、その……えっと、いつも俺ばっかり……き、気持ち良くしてもらってるから……えっと……ほら、た、誕生日だし、せっかくなら夏樹さんに気持ち良くなってほしいな~って……思うわけですよ!!」
「……んん?」
~~~~~っ待て待て待てっ!!
全然いつも通りじゃないですねっっ!!
いつもと違い過ぎる!!
甘えて来るのも、ツーショット写真を撮らせてくれるのも、いつもと違う!!
それに、なんなの!?急にどうしたの!?
きみは一体何を言ってるのかな!?
俺の誕生日だから!?
いやいや、絶対違うよね!?
だって、俺に気持ち良くなって欲しいって……それ意味わかって言ってる?
夏樹は笑顔のまま固まった。
「あ……れ?あの、夏樹さん?」
「――……はっ!一瞬意識が飛んでたっ!!」
「ええっ!?だ、大丈夫ですかっ!?」
「だいじょばないかも……」
もういろんな意味で頭が痛い……
「え、どどどどうしよう!?あ、そうだ!えっと、しょ、しょーぼーしゃ!!お電話しなきゃっ!!」
パニクった雪夜が慌てて起き上がると、夏樹の額に手を当て、キョロキョロと周囲を見回した。
「うん、落ち着いて雪夜。俺燃えてないから」
「へ!?夏樹さん燃えてるんですか!?」
「いや、燃えてないでしょ!?よく見て!?それより……んん゛、急にどうしたの?」
軽く咳払いをすると、雪夜を落ち着かせるために平静を装って微笑んだ。
「ど、どうしたのって、だって、夏樹さんがだいじょばないって……」
雪夜が困惑しつつ答える。
「あ、はい。そうでしたね!……って、いや、そうじゃなくてっ!!」
「……?」
「だから……なんで急に俺を気持ち良くしたいだなんて……」
「え……っと、お誕生日だから……?」
「本当にそれだけ?」
「ふぇ?」
たしかに、以前から雪夜は自分ばかり気持ち良くなって申し訳ない……というようなことは言っていた。
夏樹にも気持ち良くなって欲しいというのは、何度も聞いた覚えがある。
でも、その度に夏樹もちゃんと気持ち良くなってるからそんなことは気にしなくて大丈夫だよと説明してきた。
それなのに……?
「……」
少し考え込んだ夏樹は、両手で顔を覆って大きく深呼吸をした。
顔を軽く撫でながら天を仰いで、ゆっくりと雪夜に視線を向ける。
「あの……夏樹さ……ん?……」
「たとえば、どうやって気持ち良くしてくれるの?」
「え、どうやって……って、あの……夏樹さんがして欲しいことを……」
「雪夜は、どうすれば俺が気持ち良くなると思う?」
「え……っと……?」
夏樹の返事が予想外だったらしく、雪夜が言葉に詰まって俯いた。
ブツブツ呟きながら、両手で頭を抱えて蹲る。
どうすればいいのか必死に考えているらしい。
そんなの……考えるまでもないのに……
「ゆ~きや?」
「……」
「雪夜く~ん。お~い!」
「ふぁ、ふぁい!?」
「わからないなら、教えてあげようか?」
「あ……はい!」
「じゃ、おいで」
夏樹はにっこり笑って雪夜の服をサッと脱がせると再びベッドに押し倒した。
「え?あああの、なななつきしゃん!?こここれじゃいつもと同じで……」
「そうだよ?俺はいつも、雪夜が気持ち良いと俺も気持ち良いよって言ってるでしょ?」
頬から顎、首筋から鎖骨にかけてゆっくりと指を滑らせる。
「ぁんっ……っ!」
ピクリと反応し小さく喘いだ雪夜が、顔を赤くして慌てて口を押さえた。
その手を片手で纏めて雪夜の頭の上で軽く押さえつける。
「だから、まずは雪夜が気持ち良くならないとね?」
「……へ?……――っ!?」
夏樹が胸の突起を指で掠るように撫でると、雪夜が声を我慢して口唇を噛みしめ、身体をよじった。
「ほら、口唇噛んじゃダメだよ。俺を気持ち良くしてくれるんでしょ?ちゃんと声聞かせて?」
「で、でも……」
「恥じらいは捨てて、素直に感じて……乱れてみようか」
「……んっ!?…………っは……ぁっ……んっ――」
耳元を愛撫しながら囁くと、耳が弱い雪夜が首をすくめつつ喘いだ。
うん、いい声……
夏樹はふっと微笑んで舌なめずりをすると、指を股間へと滑らせた――……
***
雪夜の様子については、いろいろと思うところはある。
だが……
「誕生日だから、気持ち良くなって欲しい……」
雪夜がそう言い張るのなら、お言葉に甘えて気持ち良くしてもらおうじゃないか。
だいたい、雪夜は自分ばかり……というけれど、単に雪夜が敏感過ぎてイクのが早く、先に気を失ってしまうので、夏樹がイっていることに気付いていないだけなのだ。
だから、夏樹に気持ち良くなって欲しいというなら……
「雪、俺がイクまでトばないように頑張ってね」
……って、もう聞こえてないかな?
***
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