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SS8【ハローベイビー♪3(雪夜)】

「え、あの、な、なんで夏樹さんがちっちゃくなったんですか!?」  この赤ちゃんが夏樹本人……と言われても、すぐには状況が理解できない。  っていうか、なんで斎さんたちはそんなに落ち着いてるんですか!? 「う~ん、なんでちっちゃくなったんだろうな~。それはさすがに俺たちにもわからねぇけど、でもまあ、ナツがこうなった原因は確実にバカ浩二だな」 「コージだろうね~」  斎と裕也が意味深な顔で目配せをすると、同時にため息を吐いた。 「え、浩二さんですか?」 「昨日コージがここに来たでしょ~?」 「はい、海外出張の帰りだって……」  浩二は昨日の昼過ぎ、出張先で買ったというお土産を両手いっぱいに持ってきてくれた。  別荘に来るのは久しぶりなのでもっとゆっくりしたかったようだが、「まずは会社に顔を出してきて下さい!」と夏樹に叱られて、お土産を置いただけで帰って行ったのだ。  浩二さんが夏樹さんを赤ちゃんにしたの?……え!?浩二さんって実は……魔法使い!?  うわぁ~スゴイ!……いやいや、そうじゃなくて!悪い魔法使いだ!?  ということは……浩二さんを倒せば夏樹さんは元に戻るのかな!?  でも倒すってどうやって!?パンチ?キック?……ダメだ、勝てる気がしない…… 「お~い雪ちゃん?なんか愉快なこと考えてそうだけど、あいつは魔法使いとかじゃないからね?」 「ええ!?違うんですか!?」 「ブハッ!……っハハハ!うん、残念ながら違うんだよね~」  心底残念そうな顔をする雪夜に、斎と裕也が吹き出した。 「バカ浩二が直接ナツに何かしたってわけじゃないんだ。ただ、こうなった原因は、あいつが買って来たにあると思う」 「お土産?」 「簡単に言うとね、コージが買って来たお土産の中に、があったってことだね」 「当たり?」  って、どういうこと!? *** 「あいつはな、全てにおいてセンスが絶望的と言っていいほど悪いんだ」  斎がちょっと顔を顰めながらこめかみを軽く掻いた。 「コージの服のセンスがしぬほど悪いのは雪ちゃんも知ってると思うけど、実はお土産のセンスもめちゃくちゃ悪いんだよ~。その上、んだよね~……」  裕也たちの話では、浩二が気に入って買って来たというお土産は、ろくなものではないのだとか。  その中でも要注意なのは、謎の置物や仮面、それから年代物の類や宝石類。  浩二からそれらを貰ったり押しつけられたりした場合、必ずと言っていいほど身の回りで良くないことが起こるのだ。  つまり、浩二が購入した品は、いわゆる『呪いの~』や『悪魔の~』と言われるような曰く(いわ)つきのもので、持ち主に災いをもたらすヤバい系の一品だった……ということだ。  ただ、浩二本人はそういうものから影響を受けたことがなく、曰くつきのものだとは知らずに購入しており、至って真面目に「これは良い物だ!」と思って善意からお土産として渡してくるので質が悪いのだとか。    浩二さんって一体…… 「じゃあ、斎さんたちも呪われたことがあるんですか!?」 「一応あるぞ?というか、ここに集まるいつもの連中は全員が何かしらの被害にあってるな」 「ええ!?」  兄さん連中だけでなく、愛華(あいか)瀬蔵(らいぞう)たちも被害にあっているらしい。 「まあ、曰くつきって言っても、悪霊に取り憑かれて呪い殺されたり、周囲に危害を加えたりするような強力な代物(しろもの)じゃないからマシだけどね~」 「でも持ち主に災いをもたらすって……」 「うん、でもコージが買って来るものなんてせいぜい……微妙に体調が悪くなるとか、ちょっと命を狙われる回数が増えるとか、坂道で車のブレーキが利かなくなるとか、家が火事になるとか、猫耳が生えるとか、天邪鬼みたいに正反対のことしか口に出来なくなるとか……その程度の災いだからねぇ」 「多少うざい程度だな」 「たまに日常生活に支障が出るのもあるけど、ほとんどは気にならないよね~」  裕也があっけらかんと言うと、ケラケラと笑った。  いやいや、多少うざいってレベルじゃない気がします!!十分危険じゃないですか!? 「だってさぁ、呪われた物なんて持ってる人は世界中でごく一部だよ?だけど、そんな物を持ってなくても、危険なことなんてそこら辺にいくらでも転がってるでしょ?自分が気を付けてても事故や事件に巻き込まれることはあるしね。だから、それくらい大したことはないよ」 「それはそうですけど……」  う~~~ん……  起きてからずっと驚きの連続だったせいか、いよいよ頭が回らなくなってきた。 「だぁ~!だっだっだっ!」  いっぱいいっぱいになった雪夜がまた泣きそうになっていると、「大丈夫だよ」と言うように夏樹が雪夜の手を握ってきた。  小さい手の温もりにホッとする。  うん、よし!もういいや!  雪夜は、あの夏樹が「キツイ」と愚痴るほどの愛華の“地獄のトレーニング”も飄々とこなしてしまうという裕也たちにとっては、呪いなど大したことないのだろう……と無理やり納得することにした。  というか、そんなことよりも今問題なのは…… 「ところで、夏樹さんはどうすれば元に戻るんですか!?」  斎さんたちも呪われたことがあるというのならば、対処法ももちろん知っているはず……ですよね!?  雪夜は斎たちに(すが)るような目を向けながら、ベイビーな夏樹をギュっと抱きしめた。   「あぶぅ~?」  あ、ベイビーな夏樹さんぷにぷにで気持ちいい…… ***

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