701 / 715

SS8【ハローベイビー♪4(雪夜)】

「どうすれば元に戻るのかって?それはわからないな」  斎と裕也が爽やかに即答した。 「ええ!?で、でもでも今までにも呪われたことあったんですよね!?」 「うん、僕たちには対処できないから、お寺に行くんだよ~」 「お寺……?なるほど!お寺でお祓いしてもらうんですね!」 「そういうこと!でもね~、お祓いしてもらってすぐに呪いが消えるわけじゃないんだよね~」 「へ?」 「呪いの強さや種類にもよるみたいで、数日で消えるのもあれば数か月続くのもあるんだ」 「す、数か月ぅ~!?」 「っ!?……ケホケホ!」  雪夜が素っ頓狂な声を出したせいで驚いたのか、夏樹が一瞬ビクッと跳ねて咳き込んだ。   「今までので一番長いのは3か月くらいだったかな」  呪われている品は完全にお祓いができるまで寺に預けることになるのだが、呪いの強さや種類によっては離れていてもしばらくは影響を受ける場合があるのだとか。  雪夜の中ではお祓いと言えば……『なんか偉いお坊さんみたいなのがムニャムニャエイッ!ってよくわからない呪文みたいなのを唱えたら悪霊みたいなのがギャーって消えて、憑かれていた人はスッキリ元気になる!』というイメージなのだが……現実はそう簡単にはいかないらしい……  そんな……数か月も夏樹さんが赤ちゃんの状態だなんてこま……こま……あれ?困る?別に困らないかも……?  雪夜は、腕の中で咳き込んでいるベイビーな夏樹を見た。  咳き込む度に顔がくしゃっとなって目を瞑っているのが可愛くて、思わず頬が緩む。  あ~、夏樹さんめちゃくちゃ可愛いな~!癒されるぅ~!……なんというか……数か月くらいならこのままでも…… 「お~い、雪ちゃ~ん、戻っておいで~」 「ハッ、すすすみません!夏樹さんが可愛すぎてちょっと(なご)んじゃいました!」 「アハハ、僕たちはベイビーなっちゃんと雪ちゃんの組み合わせに癒されてるよ」  斎と裕也はそう言って、にっこりと笑った。  裕也たちにしてみれば、雪夜と赤ちゃんの組み合わせはある意味『2歳児と0歳児』の組み合わせのようにも見えるわけで、微笑ましいことこの上ないのだ。   「コホン!えっと、何の話でしたっけ?……あ、そうそう。お祓いしてもらえばすぐによくなるわけじゃないってことですね?」  雪夜はちょっとわざとらしく咳払いをして話を戻した。 「うん。そもそも、お祓いも行けばすぐしてもらえるってわけじゃないしね~」 「え!?ど、どういうことですか!?」 「あ~、実はな……」 ***  斎たちがいつもお祓いをしてもらっているお寺というのは、お正月に雪夜も連れて行ってもらったことがある白季(しらとき)家の菩提寺なのだが、そこの住職が祓えるわけではなく、お祓いを専門にしている住職の知り合いに頼んで祓ってもらうらしい。  そのため、いつお祓いできるかはその知り合いの都合次第になるのだ。 「祓える人のところに直接行くんじゃダメなんですか?」 「あぁ、その人は一か所にいるわけじゃなくて、依頼を受けて全国を飛び回ってるんだ。だから連絡を取るのも大変だし、すぐに来てくれるかは運次第……っつーか、その人の気分次第だな」 「気分の問題なんですか!?」 「うん。でも腕は確かだよ~。性格はともかくね」  どうやら、だいぶ性格にクセのある人らしい…… 「ま、そんなわけで……一応住職に連絡はしておくけど、今すぐお祓い出来るわけじゃないから、しばらくナツはそのままってことだな」 「あ、そうだ!みんなにも連絡しておかなきゃ!――」  斎たちがそれぞれ携帯で連絡を取り始めたので、雪夜はとりあえず夏樹を抱っこして寝室へと戻った。 *** 「さて……どうしようかな……」  寝室に戻った雪夜は、夏樹をベッドの上におろすと自分の衣装ケースをひっくり返した。  赤ちゃんになった夏樹には当然ながらいつもの服は大きすぎる。  起きた時はテンパっていたので、雪夜は服のことなど気にする暇もなく、赤ちゃんになった夏樹を素っ裸のままリビングに連れて行ってしまった。  一応、斎たちと話をしている間はタオルケットにくるんでいたのだが……いつまでも裸のままだと、風邪をひいてしまう。  そこで、赤ちゃんでも着られそうな服がないかと探しているわけだ。  持っている服のサイズは基本的に同じだが、デザインによって少し細めとか短めとかがあるので、重ねてみたり並べてみたりしてなるべく小さいのを探す。 「……これとかどうかな?夏樹さん、ちょっと起きてくださ~い!よいしょっと……」  ベッドに寝転がってタオルケットの端を吸っている夏樹を抱き起こすと、頭からスポッと服を着せた。   「う~ん、これでも大きいか~。でも今ある中ではこれより小さいのはないし……すみませんが夏樹さん、とりあえず、これで我慢してもらえますか?」 「だっ!」  『いいよ~』というように手をあげて返事をした夏樹が、雪夜に着せられた服の裾をニコニコしながら引っ張ってスリスリと顔を擦りつけた。 「ふふ、気に入りましたか?それはね~、夏樹さんが買って来てくれた服ですよ~!気持ち良いですよね!?肌触りがいいから俺もその服お気に入りなんですよ!あ、ちゃんと洗濯してあるから汚くないですからね!?大丈夫ですよ!?」 「きゃぁ~う!」    大袈裟な身振り手振りで話す雪夜の様子が面白かったのか、お座りしていた夏樹が、嬉しそうに両手をあげて万歳をしたと思ったらそのままぺちゃんと前に倒れた。 「え、ちょ……待って、それどうなってるんですか!?背骨折れてませんか!?息出来てますか!?」  雪夜は、器用に身体を半分に折り自分の足の裏に顔をつけている夏樹に感心しつつも、そんな恰好をして大丈夫なのだろうかと心配になっていろんな角度から必死に中を覗き込んだ――…… ***

ともだちにシェアしよう!