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SS8【ハローベイビー♪8(雪夜)】

「雪夜~、こんちゃ~っす!」 「雪ちゃん、うぃ~っす!おお!夏樹さん、マジでちっちぇぇ~!」  あっ、来た!  夏樹とブロック遊びをしていた雪夜が手を止めて振り向く。  と同時に、隣に座っていた夏樹の身体が宙に浮いた。  相川がひょいっと抱き上げたのだ。 「わぁ~い!!いらっしゃ~い!」  雪夜は満面の笑みで両手を広げ、相川の後から入って来た佐々木に抱きついた。 「お~、雪夜久しぶりぃ~!元気か?体調は?ちゃんと食って眠れてるか?無理してないか?……うん、熱はなさそうだな!」  佐々木は雪夜を軽く抱きしめるとすぐに身体を離し、雪夜の健康チェックをしてニコっと笑った。 「うん、俺は元気だよ~!」 「それは良かった。って、こら相川、いきなり持ち上げるなよ。いくら夏樹さんだっつっても、今は子どもなんだからな。ほら、びっくりしてるじゃねぇか!」 「え~?」 ***  佐々木から『相川と一緒に泊りがけで遊びに行く!』と連絡があったのは二日前のこと。  連絡は毎日のように取り合っているが、佐々木たちと直接会うのは久しぶりだ。   「今日は俺のお友達が遊びに来てくれるんですよ!えっと、このふたり!ほら、前にテレビ電話でお話したでしょ?りんくんも一緒に遊びましょうね!」  と、朝ご飯の時に夏樹にもふたりの写真を見せて話しておいたのだが、ブロック遊びに集中していたところを背後から急に抱き上げられたので驚いたのだろう。  相川に抱き上げられた夏樹はびっくりした顔で固まっていた。 「相川、ちっちゃい夏樹さん固まってんぞ」 「大丈夫だって!俺これでも子どもの扱い得意なんだよ?学生時代にもボランティアとかでよく子どもの相手してたし!高い高いとかしてあげるとみんなんだってば!見ててよ?」  相川は自信満々にそういうと、夏樹を“高い高い”しようとした。  ん?高い高い……? 「あっ!相川、待って!高い高いはダ……」 「いぃ~~やぁあああっ!!お~りぃ~るぅ~!はなしてぇぇえ!!」  “高い高い”と聞いて雪夜が相川を制止する前に、それまで固まっていた夏樹が全力で「おろせ」と暴れた。 「おい相川、たしかにはいるけど、はなさそうだぞ?っつーか、泣かせるなよ!」 「あれぇ~?泣かせるつもりは……」 「い~や~だぁああ!!おりるのぉ~!!」 「あああの、相川!とりあえず、下ろしてあげて!高い高いはしなくていいから!っていうか、しちゃダメ!」 「え~?本当に子ども喜ぶんだけどな~……でも雪ちゃんがそう言うなら。ほいよ……って、痛ぇえええええ!?」 「ゆちたぁ~~ん!!」  相川が床に下ろすと、夏樹は手に持っていたブロックの剣を相川の向こう脛(弁慶の泣き所)目がけて思いっきり叩きつけ、脱兎のごとく雪夜の方へと逃げて来てギュッと足にしがみついた。   「わわっ!り、りんくん!?」 「ゆちたん、ゆちたん!あいちゅ、いやぁあ!!メッ!ちて!」  半泣き状態の夏樹は必死に相川を指差し、「あいつわるいやつ!」と雪夜に訴える。 「ええ!?えっと、よ、よしよし、大丈夫ですよ~。びっくりしましたよね、もう怖くないですよ~!」  雪夜は予想外の夏樹の動きに驚き、若干テンパりつつ夏樹を抱きしめて背中をポンポンと撫でた。 「ぬぉおおおおっ!!……ちょ、雪ちゃん!?今ちっちゃい夏樹さん俺の足叩いたよ!?めちゃくちゃ痛いよ!?俺もよしよししてぇ~!!」  床の上に転がって呻いていた相川が、これまた半泣きで雪夜に訴えてきた。 「ご、ごめん!相川だいじょ……」 「はいはい、どさくさに紛れて雪夜に甘えんな!こんなすぐにぶっ壊れるような剣で叩かれたくらいで大袈裟なんだよ!だいたい、おまえが余計なことをしようとしたから……っつーか、俺も忘れてたけど“夏樹さん”じゃなくて“りんくん”な!呼び方!」  相川の心配をする雪夜を遮り、佐々木が呆れ顔で相川の頭をペチッと叩く。  佐々木の言う通り、ブロックを簡単に繋げて作っていただけの剣は脆く、相川の向こう脛に当たった瞬間バラバラに崩れて床に散らばっていた。 「俺は高い高いしようとしただけなのにぃ~」  相川は散らばったブロックを拾いながら、ちょっと口唇を尖らせた。   「あぁ、あのね、その高い高いなんだけど、実はね――……」   ***  あの日、夏樹が赤ちゃんになったと聞いて、浩二以外の兄さん連中は「そんな面白いもの、見逃すわけにはいかないだろう!?」と喜び勇んで翌日から代わる代わるやってきた。(表には出さないが、本音は夏樹と雪夜を心配してのことだ)  そんな兄さん連中、小さい夏樹を見るなり「ナツのくせに可愛いなおい!」と一瞬でハートを奪われた。  みんな元々子ども好きなのもあって、小さい夏樹との遊びはお手のものだ。  “高い高い”もそのひとつ。  兄さん連中は(裕也以外は)みんな背が高いので、普通に上に腕を伸ばすだけでも平均より高い位置での“高い高い”になる。  子どもにしてみればそれだけでも十分なアトラクションなのに、サービス精神旺盛な兄さん連中は「もっと高い方が喜ぶだろう」と小さい夏樹を。  兄さん連中の力だと、ポンっと軽く浮かせる程度でも天井近くまで上がってしまうので、小さい夏樹にしてみればかなり怖かったのだと思う。(もちろん、ケガをさせたり落としたりするようなことはなかったが、隣で見ている雪夜もハラハラドキドキだった……)  そうして数日間、兄さん連中に代わる代わる“高い高い”よりも高く“飛んでけポイポイ(雪夜命名)”をされまくった夏樹は、とうとう“高い高い恐怖症”になってしまい、いつ投げられるかわからないからと兄さん連中に抱っこされるのも泣いて嫌がるようになって、その分、更に雪夜にべったりになった。  そんなわけで、現在“高い高い”は全面禁止になっているのだ。   ***

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