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SS8【ハローベイビー♪11(雪夜)】

「じゃあ、雪ちゃん、りんくん、またな~!」 「雪夜、何かあったらいつでも連絡してこいよ!」  翌日の昼過ぎ、佐々木と相川は雪夜と夏樹を抱きしめて頭を撫でると、車に乗り込んだ。   「佐々木、また来てね?ふたりとも気を付けて帰ってね!相川、運転気を付けて!スピード出し過ぎちゃダメだよ!?それから、えっと、えっと……」 「ゆ~きや」  佐々木が苦笑しながら「落ち着け」と雪夜の頬を軽く撫でた。 「相川なら俺が見張ってるから大丈夫だよ。家に着いたらまた連絡するからな」 「ぁ……うん……」 「しょ~た(そうた)、ささ、ばいば~い!」 「ん?」  声のする方を見ると、夏樹が両手をあげてピョンピョンしながらふたりに手を振っていた。 「可愛っ……って、そうか!」  夏樹の可愛さにちょっとほっこりしたが、雪夜は慌てて夏樹を抱き上げ、車の窓に近付けた。   「りんくん、これで見えますか?」 「うんうん、ゆちたんありまと(ありがとう)!しょ~た、たっち!」 「おうよ!うぇ~い!」  運転席にいた相川が助手席側に身を乗り出してきて、嬉しそうに夏樹とグータッチをした。  昨日はお菓子攻撃に若干揺らぎつつも相川には徹底して塩対応をしていた夏樹だったが、お風呂に入る時も寝る時も「りんくん、相川たちと一緒でもいいですか?」と雪夜が聞くと「いいよ~!」と即答だったので、どうやら相川の“お菓子で仲良くなろう作戦”も無駄ではなかったようだ。  ちなみに、リハビリルームに布団を敷いて雑魚寝をしたのだが、夏樹は寝る直前まで相川と追いかけっこをして遊びまくっていた。  このことを大人の夏樹さんが知ったらびっくりするだろうな~!  何はともあれ、ふたりが仲良くなってくれて良かったです!―― 「ささちも!たっち!」 「はい、た~っち!りんくん、雪夜のこと頼むぞ!」 「あい!」 「よし!」 「って、ちょっと佐々木!なんでりんくんに俺のこと頼んでるの!?逆でしょ逆!」 「はははっ!じゃぁな~!」  佐々木たちは、ふくれっ面の雪夜に爆笑しながら車を出した。 「もう!……」  雪夜が寝込んでいる間に年月が過ぎて、いつの間にか親友のふたりは立派な社会人になっていた……  ふたりは毎日のように連絡をくれるし、こうやって月一回くらいは泊りがけで遊びにも来てくれる。  それでも……大学時代はほぼ毎日会っていたから、ふたりと気軽に会えなくなったのは少し寂しい。  お泊り会の時間が楽しい分、毎回ふたりを見送る時には何だかひとりだけ置いて行かれたような気持ちになって泣きそうになる。  佐々木たちはそのことに気付いているのか、別れ際はわざとふざけて雪夜を笑わせてくるのだ。  それはそれでふたりの優しさに泣けるんだけどね……  って、ダメダメ!いつもは泣いたら夏樹さんが抱きしめて慰めてくれるけど……今は……  雪夜はぐっと涙を堪えて佐々木たちの車が見えなくなるまで手を振った。 *** 「ゆちたん?」  夏樹がぼんやりと立ちすくんでいた雪夜の服をツンツンと引っ張った。 「……ほぇ?あ、すみません、もう中入りましょうか!」 「ゆちたん、おもとまち(おともだち)バイバイ、さみちぃね?」 「え?あ、うん……いや、ちょっとだけですけどね!?」  雪夜は夏樹に心配かけないよう無理やり笑顔を作った。 「あのね、だいじょぶよ、りんくんいるよ?ほら、ゆちたん、おいで?……」  小さい手に引かれるまま雪夜がしゃがみ込むと、夏樹が精一杯両手を伸ばして「ぎゅぅ~~~!よちよち!」と雪夜を抱きしめてくれた。 「~~~~っ……ふぇ~~ん、りんくぅ~~ん!!大好きぃいいいいい!!」  今は夏樹さんが子どもだから、俺がしっかりしなきゃ!……と涙を堪えていたのに、ふとした仕草やかけてくれる言葉がやっぱり夏樹さんで……抱きしめてくれる手は小さいのに、変わらない夏樹さんの温もりに思わず涙が溢れていた。  ぅぅ……子どもなのに夏樹さんが男前(イケメン)過ぎるぅ……ずるいよぅ……   「ぅふふ、りんくんはね~、もぉ~~っとしゅきぃ~~!!」  小さい夏樹に慰めてもらっている自分が情けなくて、でもなんだか嬉しくて、泣き笑いをする雪夜に、夏樹が嬉しそうに笑った。  と、その時…… 「な~かなか戻ってこないから様子を見に来たら……なんでこんなところで告白大会やってんだ?このバカップルは……」  笑いを噛み殺した声がして頭を起こすと、玄関に斎が立っていた。 「いいいいつきしゃん!……ああああああのこれはですね!?……あの、えっと」  うそぉおおお!?斎さん、いつから見てたんだろ!?恥ずかしいぃ~~! 「いったん(いっちゃん)、あっちいって!ゆちたんは、りんくんしゅきしゅきなの!いったんおじゃおじゃまん(おじゃまむし)よ!」  夏樹は、真っ赤になってテンパっている雪夜をギュっと抱きしめてポンポンと撫でながら、斎に向かってで叫んだ。 「はいはい、どや顔乙!っつーか、そんなら……おい凜坊、俺も雪ちゃんと凜坊のことがしゅきしゅきだぞ~?俺も仲間に入れろ~!」  斎はしながら両手を広げ雪夜と夏樹を抱きしめると、器用にふたり同時に抱き上げた。   「あ~~ん!いったんはダメよぅ!ぎゅぅ~ないの!」 「ヒェッ!?いいいつきしゃん、危ないですよ!?俺重いから下りま……」 「お~~っと、おふたりさん!あんまり暴れると落としちゃうぞ?ケガしたくなかったら大人しくしてような?」 「あわわわ、ふぁいっ!」 「あい!」  斎が落とすフリをしたので、雪夜と夏樹は慌てて斎の首にギュッと抱きついた。 「よし!」  斎は満足そうに笑うと、そのままリビングまで運んでくれた。  いくら夏樹が子どもで雪夜が小柄だと言っても、ふたり抱っこは重たいはずだが……  さすが斎お兄様です! ***

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