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SS8【ハローベイビー♪14(雪夜)】
「――……!」
……ん~?あれ、俺寝ちゃってたのか……
数人の話し声と誰かが廊下をバタバタと走る振動で目が覚めた。
何度目かの休憩でそのまま眠ってしまっていたらしい。
「――お~い、戻っておいで~!通りすぎちゃったぞ~!」
「え~っ?おっとっとぉ~!……どこどこぉ~?」
元気いっぱいの男の子の声と男の人の声。
もうお祓い終わったのかな?
でもあの声はりんくん……じゃないよね?男の人も知らない声だ。「たまちゃん」さんかな?誰だろう……
雪夜が首を傾げながら起き上がると、一度通り過ぎていった賑やかな足音がまた戻ってきて休憩室の前で止まった。
「そうそう、そこそこ!って、ちょっと待てっ!まだ開けちゃダメだ!襖に何か貼って……」
「りくがいっちば~ん!」
「あ――っ!!」
スパーンっと勢いよく襖が開いた瞬間、バチッ!と破裂音がして目の前が真っ白になった。
それと同時に吹き飛ばされそうな風圧を感じた雪夜は、慌ててギュッと身体を縮めてダンゴムシのポーズで目を閉じた。
え、なになに!?ばばば爆発!?なにがどうなったの!?俺生きてる!?助けて夏樹さあああん!!
わけがわからず不安と恐怖で心臓がドキドキする。
「……?」
しばらくして、雪夜がそ~っと目を開けると……廊下にも同じようにダンゴムシのポーズをしている人たちがいた。
りんくんよりは少し大きいくらいの男の子と、その子を庇うように覆いかぶさっている男と、その後ろにいるのはたぶん「たまちゃん」だ。
「一体なにが……ハッ!莉玖大丈夫かっ!?ケガしてねぇか!?」
「うん、りくげんき!びっくりしたね~!」
「そうだな。っていうか、こら莉玖ぅ~!綾乃が待ってって言ったのに勝手に開けちゃダメだろ~!?」
「うん、ダメだった!ピカーッ!でバーンッ!だったね!すごかった!」
「いや、そうじゃなくて……まったく……まぁ無事でよか……あれ?」
きゃはははと無邪気に笑う男の子につられて苦笑していた男が、ようやくこちらに気付いた。
「おっと、気付かなくてごめんな。大丈夫だったか?びっくりしたよな。あ、オレは綾乃 って言うんだ。で、この子は莉玖 だ。よろしくな!」
アヤノさんと……リクさん?……俺知ってる人なのかな……でも今の言い方だと初めましてっぽい……?
「ケガしてないか?……うん、大丈夫そうだな。え~と……あの、きみはひとり……なのかな?」
アヤノと名乗った男は、状況が飲み込めずに小首を傾げている雪夜の前に屈みこみ、安心させるように笑いかけながら雪夜にケガがないか確認すると、誰かを探すようにキョロキョロと部屋の中を見回した。
んん?……なんだか俺すごく子ども扱いされてる?
たしかに童顔だと思うけど俺はもう大人だよ!?
「あぶぅ~!」
……あれ……れ?
「ひとりです」と答えたつもりなのに、雪夜の口から出たのはやけに赤ちゃんっぽい声だった。思わず自分の口元を手で押さえる。
今のって、俺の声?
「わぁ~!あ~の、あかちゃんかわいいね~!」
男の子がニコニコしながら雪夜の頭をよしよしと撫でてくる。
へ?なんで俺がよしよしされてるの?それにしてもこの子やけに大きいな~。たぶんりんくんより少し大きいくらい(3~4歳?)のはずなのに、俺よりも背が……え、待って、俺より背が高い……?
「うん、可愛いなぁ!でもちょっと待てよ?……あの~、この部屋にいるのって確かひとりって……」
綾乃が訝し気な顔で後ろにいる「たまちゃん」に話しかけた。
「はい。住職のお知り合いの方がひとり……」
「赤ちゃん連れですか?」
「へ?赤ちゃん?いえいえ、ここには赤ちゃんなんて……って、本当に赤ちゃんがいるっ!?いやちょっと待ってください。もしやこれは……たたた大変だぁあああ!!」
雪夜を見た「たまちゃん」の顔がみるみるうちに真っ青になって、頭を抱えた。
さっきからみんな何を言ってるんだろう?
赤ちゃんってどういうこと!?まさか……
周囲の反応から嫌な予感がした雪夜は慌てて自分の顔や身体をペタペタと触ってみた。
よく見ると自分の手がやけに小さい。指が短くて爪も小さくて全体的にぷくぷくしてて……夏樹さんが赤ちゃんになった時の手に似ている。それに何だかお腹もポッコリで腕もムチムチで……っていうか、俺いま裸じゃないですか!?俺の周りにあるこの布って服!?つまり……
俺も赤ちゃんになっちゃったぁあああああああああっ!!!???
「ふぎゃあああああああああああああっっっ !!」
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