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第2話

「いませんよ」 「ならいーじゃん。3番さんもらいなよ。すごい美人だよ。男だけど」 そう言って、谷口先輩はゲラゲラ笑った。 何が面白いか分からん。 「千景 男と付き合えない?」 「男とか女とか別に関係ねぇと思ってますけど」 「へぇー」 真下先輩がちょっと目を見開いた。え、そんな意外? 「じゃあいーじゃん。今日の放課後、図書室行ってね」 「……」 俺はそれには返事をしなかった。けど、先輩は全然気にしてないみたいだった。 名前すら教えてもらえない…っていうか、こんなんなら名前を呼んでもらえてたんだろうか、なんて、見たこともない3番目の恋人さんを勝手に不憫に思ってしまう。こんなの大きなお世話だよな。 谷口先輩も他の先輩も、ただニヤニヤ笑っていて、気分が悪いなと思った。 「真下先輩」 「なぁにー?」 「俺 今日週番で遅くなるかも知れないんすよね。その人の連絡先とかって教えてもらえないです?」 「千景はマジメだねぇー。んなの待たしときゃいいのに」 「いや…」 それは人としてやりたくない。 「ちょっと待ってねー。番号だけ送るわ」 「ありがとうございます。すげぇ待たせそう、ってなったら連絡してみます」 「そしたら3番さんに、もしかしたら千景から連絡入るかもって言っとくわ」 「お願いします」 その前にもう連絡しとこう。 真下先輩はともかく、谷口先輩とかは陰に隠れて様子見てそうだもん。それは嫌だ。 週番なんで先生の小間使いになってきます、って伝えて、俺は先輩たちとたむろしていた屋上を出た。 歩きながら、スマホをいじって3番目の恋人さんにショートメールを送る。返事なんかなくたっていいし、何なら好きでもない会ったこともない男に会うなんて嫌だ、って思ってもらっててもいい。 これは俺の勝手な同情でしかないと思うから。 でも。 あんな風に扱われるのは嫌だよな。好きな相手になら、なおさら。 付き合った経験がなくたって、それくらいは分かる。 『初めまして。今日 真下先輩から会えって言われてる相手です。もし何となく会ってみようかなって思ってるなら、場所を変えてください。図書室じゃなくて、地学準備室で。週番なんで、少し遅くなるかもしれません。真下先輩にはあなたに連絡すること言ってないんで、黙っててもらえると助かります。』 一方的だけど、こんな感じでいっかな。 メールを送って、俺は小さく息を吐いた。 何となくつるんで来たけど…つるむ相手は考えた方がいい、よな。

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