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放課後。 日誌を書いて週番の仕事を終わらせた俺は、その足で地学準備室へ向かった。 場所を地学準備室に変えたのは、単純に俺がそこへ行くから。図書室は1年の教室からも2年の教室からもちょっと遠いんだよな。 「失礼しまっす。せんせ、日誌出しに来ましたよー」 「おーう、ご苦労さん。万谷(よろずや)、お客さん待ってるぞ」 地学準備室のドアを開けると、担任がひらひらと手を振った。その向こうに、会ったことのない人が一人、少し居心地悪そうに椅子に座っていた。 「お待たせしてすみません。んじゃ行きましょっか。先生、また明日」 「気をつけて帰れよー」 担任のこの緩さが割と好きなんだよな。なんて思いつつ、俺はその人と地学準備室を出た。 「…えっと……突然、メールしてすんませんでした」 何か……真下先輩と付き合ってた人だから、そりゃ綺麗な人なんだろうな、とは思ってたけど。 正直、かなり…思ってたよりも美人で、緊張もするよね。ビスクドールみたいに綺麗な顔で中性的な雰囲気の、華奢な人だ。何となく放っておけない感じがする。 3番目の恋人でこれだけ綺麗なら、他の恋人はどんな人なんだろうな…。 「あの、とりあえず会うだけ会ったし、ってかあんな一方的なメールだったのに待っててくれてありがとうございました。えっと…」 もうこれで、真下先輩の気まぐれ(?)に付き合う必要もないよな、って思いながら言葉を紡ぐ俺を、その綺麗な人はきょとんとして見ていた。 「えっと…一応会うことは会ったから、真下先輩も満足だろうし…なので、その、もう…俺に付き合わなくて大丈夫です、よ…? あ、でも待たせてたんで、何か飲みたいのありますか?」 緊張してキョドキョドしながら、ちょうどそこにあった自販機を指差す。 待たせちゃってたのは事実だし、お礼はしないと。 「…律儀だね」 「え」 初めて聞くその人の声は、優しくて柔らかくて、心地よかった。でも、少し…悲しそうだった。 「涼輔(りょうすけ)の思いつきにいちいち付き合うことないよ。今日だって」 「でも…待っててくれたじゃないですか」 「それは、律儀にメールくれたから。どうせ、谷口くんに笑われるだけって思ってたから…場所変えてくれたのも、わざわざメールくれたのも、嬉しかったから」 あぁ、やっぱり谷口先輩がそういうことするだろうって思ってたんだな。 「名前聞いてもいい? 俺は、清瀬 すい。2年1組」 「あ、えっと、万谷 千景です。1年3組」

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