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第6話
「…そうだね。淋しかった。付き合ってても、いつも淋しかった。…毎週水曜日が終わるのが、淋しかった」
「先輩…」
何て声かけよう、って悩んだ俺の雰囲気を察したように、先輩はすぐに顔を上げて笑った。だけどどこか痛そうな笑顔で、俺は胸が苦しくなった。
「大丈夫。ごめんね、暗い話して」
「いや、その…」
「ありがとう。今日会えたのが万谷くんで良かった。そこだけは涼輔に感謝だね」
「それは、いや、えっと…光栄です」
「ふふっ」
思わず、といった感じでこぼれた笑顔に、ほんの少し安心する。良かった。そんな風に笑えて。
「あー、と。先輩、駅までですか? 一緒に帰りません?」
「うん。万谷くんも電車なんだね」
「や、俺 四中区なんで、基本は自転車なんですよ。電車は夏と冬だけ」
「あ、そうなんだ。あれ? でも…」
そう。季節は秋。
「今は、パンクさせちゃったんで…電車です」
「あぁ、それで」
先輩はまた笑う。こう、何て言うの? 花が綻ぶような? そういう華やかさがある笑顔と、花がはらはら散るような憂いを帯びた笑顔と、どっちも持ってるのずるい。
まぁ、俺には高嶺の花だけど。
先輩と下駄箱で靴を履き替えて外に出る。
「万谷くんって、涼輔と仲いいんだね。全然タイプ違うと思うんだけど…」
「仲いいって言うか、多分 珍獣みたいな扱いなんだと思うんすよね」
「珍獣?」
先輩が首を傾げる。
「真下先輩の周りって、先輩に同調する人が多かったんです。だから生意気な俺が珍しかったみたいで…何かそういう、感じです」
「あ…何となく分かるかも」
ここにいない人のこと言うのもアレだけど、谷口先輩とかは特にそうなんだよな。真下先輩の言うこととかやるとこに、そうだよなー!ってすぐ同調するタイプ。なので俺はあの人がそんなに好きじゃない。
「確かに涼輔の友達とは雰囲気違うよね。正直、苦手だったんだ。涼輔のことは好きだったけど…」
「分かりますよ」
谷口先輩たち、笑ってたもんな。
「何か違う話しましょっか。清瀬先輩ミルクティー好きなんすね」
強引に話題を変えた俺に、先輩はちょっと目をパチパチさせて、それでも少し笑って口を開いた。
「たまに甘いの飲みたくなるんだ。いつもはお茶しか飲まないよ」
「えっっ」
「意外?」
「ミルクティーすげぇピッタリだな、と思ってたんで」
「ピッタリ?」
「雰囲気が。ほんのり甘くてちょっと高級な感じ…みたいな」
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