7 / 81

第7話

「ふふっ、俺ってそんな感じなの?」 「や、まぁ、高嶺の花感はありますよね」 「高嶺の花って」 先輩はそう言って笑う。 「万谷くん、面白いね」 「そうですか?」 やべー。良かった、面白いって評価で。下手したら何か…俺みたいなフツーのやつが先輩のような超美人を口説いてるみたいだったよね! 手が届かない以前に、そんな風に考えてないしな。真下先輩レベルじゃないと、清瀬先輩に手は出せないだろ。 「万谷くんはカフェオレが好きなの?」 「俺も、たまに飲みたくなるんです。コーヒーそんな得意じゃないのに、何でかカフェオレ。でも、いつも一口飲んでから、これじゃなかったーってなりますよ」 「今も?」 「はい」 素直に頷いた俺を見て、清瀬先輩はまた笑った。 良かった。笑ってくれて。笑えるくらいで。 「交換する?」 「ゴホッ」 「えっ、万谷くん!? 大丈夫!?」 「ぐっ、ゴホッ、だい、ゲホッ、ウグッ」 カフェオレ! 気管に! 慌てて背中を擦ってくれる先輩がハンカチまで貸してくれる。 「大丈夫?」 「ゴホッ、っはぁー…大丈夫っす。ありがとうございます」 「声が…」 噎せたからガッサガサの声してる。 「…先輩」 「なに?」 「あんまり気軽に『交換する?』とか言わない方が良いですよ」 「え…?」 先輩きょとん顔。可愛いなチクショウ!! 「俺が先輩のファンだったらどーするつもりですか。ストローとか取っとかれたらどんな気分すか? ダメですよ、よく知らないやつにそういうこと言ったら」 「……でも万谷くん、俺のこと知らなかったし。そんなことしないでしょ? それに、俺にファン…なんていないよ」 「初対面のやつを信用しすぎです。あとファンはいると思います。先輩すげぇ綺麗だし」 「万谷くんには疑う要素ないもん。綺麗って言われるのは…何か照れるね」 そう言って、ほんとに照れたように笑うその表情の可愛さと言ったらもう。プライスレス。 真下先輩、ほんとに手離していいの? こんな綺麗で可愛い人。すぐ誰かの恋人になっちゃうよ? けどまー、真下先輩そういうこと言われるの嫌いだもんな。 話をしながら歩いていれば、もう駅は目の前に。 うちの学校、駅から近いのは楽でいいんだよな。もうちょっと話していたい気もするけど、俺はわきまえる男だから。 「それじゃあ、ありがとうございました」 「俺の方こそありがとう。…楽しかった」 「そんなら良かったです。気をつけて帰ってくださいね」

ともだちにシェアしよう!