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第7話
「ふふっ、俺ってそんな感じなの?」
「や、まぁ、高嶺の花感はありますよね」
「高嶺の花って」
先輩はそう言って笑う。
「万谷くん、面白いね」
「そうですか?」
やべー。良かった、面白いって評価で。下手したら何か…俺みたいなフツーのやつが先輩のような超美人を口説いてるみたいだったよね!
手が届かない以前に、そんな風に考えてないしな。真下先輩レベルじゃないと、清瀬先輩に手は出せないだろ。
「万谷くんはカフェオレが好きなの?」
「俺も、たまに飲みたくなるんです。コーヒーそんな得意じゃないのに、何でかカフェオレ。でも、いつも一口飲んでから、これじゃなかったーってなりますよ」
「今も?」
「はい」
素直に頷いた俺を見て、清瀬先輩はまた笑った。
良かった。笑ってくれて。笑えるくらいで。
「交換する?」
「ゴホッ」
「えっ、万谷くん!? 大丈夫!?」
「ぐっ、ゴホッ、だい、ゲホッ、ウグッ」
カフェオレ! 気管に!
慌てて背中を擦ってくれる先輩がハンカチまで貸してくれる。
「大丈夫?」
「ゴホッ、っはぁー…大丈夫っす。ありがとうございます」
「声が…」
噎せたからガッサガサの声してる。
「…先輩」
「なに?」
「あんまり気軽に『交換する?』とか言わない方が良いですよ」
「え…?」
先輩きょとん顔。可愛いなチクショウ!!
「俺が先輩のファンだったらどーするつもりですか。ストローとか取っとかれたらどんな気分すか? ダメですよ、よく知らないやつにそういうこと言ったら」
「……でも万谷くん、俺のこと知らなかったし。そんなことしないでしょ? それに、俺にファン…なんていないよ」
「初対面のやつを信用しすぎです。あとファンはいると思います。先輩すげぇ綺麗だし」
「万谷くんには疑う要素ないもん。綺麗って言われるのは…何か照れるね」
そう言って、ほんとに照れたように笑うその表情の可愛さと言ったらもう。プライスレス。
真下先輩、ほんとに手離していいの? こんな綺麗で可愛い人。すぐ誰かの恋人になっちゃうよ?
けどまー、真下先輩そういうこと言われるの嫌いだもんな。
話をしながら歩いていれば、もう駅は目の前に。
うちの学校、駅から近いのは楽でいいんだよな。もうちょっと話していたい気もするけど、俺はわきまえる男だから。
「それじゃあ、ありがとうございました」
「俺の方こそありがとう。…楽しかった」
「そんなら良かったです。気をつけて帰ってくださいね」
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