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第8話
俺と先輩は路線が違うから、別々の改札へ向かう。俺は何となく、先輩が改札を抜けるまで後ろ姿を見ていた。
かっこいいやつとか綺麗な人って、それだけで得だよなぁ、なんて思ってたこともあるけど。そんなわけないんだな。
あんなに綺麗でも、たった1人の心が手に入らないんだから。だから、容姿の美醜ってそんなに関係ないところもあるんだな。
俺が考えたって仕方ないんだけど。まぁ、これでもうこんな機会は二度と巡ってこないと思うから、清瀬先輩と話せてラッキー!くらいに思っておこう。
真下先輩には、会ったは会ったんだから色々言われることもないでしょ。
俺も改札を抜けて、ホームへ向かう。ちょうどよく来た電車に乗って、今日の夕飯何かなーなんて思いながら揺られていた。
家に帰ると珍しくショートメールが来ていて、それが清瀬先輩からだったから舞い上がったりちょっと感激したりで俺の感情がなかなか忙しかった。
翌朝。
「千景ぇ、昨日3番さんに会った?」
真下先輩とは最寄りが一緒だから嫌でも顔は合わせるわけで。
開口一番がそれかーい。って心の中でツッコミを入れつつ、俺は口を開いた。
「会いましたよ」
「え、いつ?」
「放課後っす。遅くなるなー、って早めに分かったから早めに連絡入れといたんすよ。場所変えてほしい、って」
「あ…そうなんだ…」
この肩透かし食らった感じなのは多分、この人も谷口先輩とかと一緒に図書館で張ってたってことなのかな。
……性格わっる。
俺も人のことは言えないけど。
「それで? どうだった?」
「??」
「会ってみてだよ」
「あー、そうっすね。すげぇ綺麗な人だったんでびっくりしました。けど」
「けど?」
「んー何か、話しやすかったし、こんな風に笑うんだなーって思ったり、ほんと色んな笑顔見れて俺は楽しかったですよ」
「……」
え、何で黙るの。黙んなよ。そっちから振った話題なんだから何か言ってよ。
「先輩は?」
「…え?」
「また3番目…いや、新しい6番目?の人、もういるんですか?」
「あー…うん、いるよぉ…」
何か急に歯切れ悪くなったな…。俺なんかした?
「そうなんすねー。清瀬先輩めちゃくちゃ美人だし、他の人もみんなあれくらい綺麗なんですか?」
「あー…うん。まぁ…」
え、何? 何この反応。
「清瀬先輩は同性でしたけど、先輩の日替わりの恋人の中には女の子も入ってるんすか?」
うち共学だしな。ふつーの公立校だし。
「あぁ…うん」
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