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第9話

ねぇ、だから何この反応。何? 「………」 急に無言になった先輩と電車に乗る。 気まずい…。 「先輩と清瀬先輩って、いつから付き合ってたんですか?」 「あ…? 夏、くらいか」 「ふーん」 え、ならまだそんな経ってなかったんだ。 真下先輩から声かけたって言ってたよな…。週一で会ってどんな話とかどんなことしてたんだろ…。 「夏休みも週一だったんすか? 会うの」 「そうだけど…。千景、やけに色々聞いてくるじゃん」 「だって他に話題ないっすもん」 「………え、それハッキリ言う?」 「言います」 だって何話していいか分からんし。 「…付き合う? すいと」 「本気で言ってます? 俺じゃ釣り合わないし、清瀬先輩なら引く手あまたでしょ」 あ、今先輩、『すい』って呼んだ。 ずっと3番さんって言ってたのに。 「男でも女でも、清瀬先輩と付き合いたいって思うやつはきっとたくさんいますよ。まぁ、綺麗すぎて引かれちゃうのもあるかも知れないけど。でも自分に自信があるやつはきっと声かけます」 俺の脳裏には、学校内でも有名な顔がちらほら浮かんでいた。 男とか女とか気にしないやつだったらきっと清瀬先輩に声をかけると思う。綺麗なだけじゃない、優しいひとだし。あの短い時間だけで分かることなんてほとんどないだろうけど、でも俺は、清瀬先輩は優しいひとだと思ったんだよな。 「先輩は、ひとりには決めないんですね」 「何でたくさんいたらダメなのー?」 「ダメとは一言も言ってないですよ。つきあい方なんて人それぞれですし」 でも、清瀬先輩の淋しそうな笑顔がちらつく。 ああいう風に笑う人、他にもいるんじゃないのかな。 「じゃあ6人いたっていいじゃん」 「そうですね」 まぁ、俺と先輩は価値観が違うから。 他の曜日も会いたい、って思ってる人は、清瀬先輩以外にもいるんじゃないかな…と、俺は思うけど。それもきっと、余計なお世話。 「先輩は…清瀬先輩のどんなところが好きだったんですか?」 「…それ、千景に話す必要あるー?」 「ないっすねー。完全俺の好奇心なんで」 聞いたところで別にどうってこともないし。ほんとにただの好奇心。 真下先輩が人を好きになる基準ってどこなのかな、って思っただけ。 そう言えば、清瀬先輩は真下先輩のどんなところが好きだったんだろう…。先輩育ち良さそうだから、真下先輩のちょっと悪っぽい雰囲気に惹かれたのかなぁ。

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