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第13話

機械を通してるのにそうじゃないように聞こえるのは、昨日俺がこんな風に笑う先輩を見てるからなのか。 『調子に乗ればいいのに』 「やめてくださいよ。ただでさえ俺、すげー舞い上がって」 『え?』 「あ、やばっ、今のなし! なかったことにしてください! あのっ、それじゃあ」 何を正直に口走ってんだ俺ぇ!! 『え、万谷くん』 「ほんと何でもないですからぁ! じゃあ、また!」 『ふふっ。うん、"また"、ね』 あ。 と思った時には電話は切れていて。 …俺、『また』とか言っちゃったし。先輩『また』を強調してたし…。 え、ちょ、これほんとに『また』とかあんの…? いや待て落ち着け俺。何でも都合の良いように考えてはいかん。社交辞令ってものが世の中にはあってだな。 舞い上がった心に自分で待ったをかける。舞い上がってないで下りておいで。 先輩とはこれ以上どうこう望んでないじゃん、俺。身の程わきまえてるし。 深呼吸をひとつして、また教室へ戻る。 「おかえり、千景」 「家じゃないけどただいま」 「でさぁ、さっきの続きだけど。先輩が他校の人と付き合ってて、彼女の友達が彼氏ほしいって言ってるんだって」 「紹介してくれるって?」 「うーん、まぁそういう流れ」 「興味あるんなら行けばいいじゃん」 「千景 一緒に行かない?」 「はぁい?」 驚いて耳の遠いおじいちゃんみたいな反応になったわ。 「なんで俺? 部活の友達とか行くんだろ?」 「行くけどー、気持ち的に親しいやつがいた方が安心じゃん。千景って割と淡々としてるし」 「褒めてる?」 「もちろん。千景も付き合ってる人いないでしょ? 友達誘っていいって言ってたし。グループで遊ぶみたいだから多い方が楽しいし」 「うーん」 でもまぁ、人恋しい気分ではあるんだよなぁ。 「途中で帰ってもいいなら…」 「その辺はいいんじゃん? じゃ、先輩に連絡しとくね!」 「うん」 こういう経験も必要…かな? 人恋しいなら行動しないと出会いもないわけだし…。 突然降って沸いた予定だけど、一応チャンスと捉えておこう。 ……彼女、かぁ。 仲いいやつにも何人か、彼女がいるやつはいるけど。何か…。 人恋しいのに羨ましいって思ってない自分もいる。これって大丈夫なのかな…。 「千景、今週の土曜日なんだけど大丈夫? 11時にバーミャン集合」 「あー、大丈夫」 何も予定ないや。 「千景 部活もやってないもんね。暇だよね」 「言うに事欠いて暇とは」 「すまん」 いや、暇だけどさ。

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