「あんまり笑わないらしいのは友人からも聞きましたけど、それがどうかしたんですか？」 仕方なしにこっちから話を振ると、先輩は乗ってきた。 「あ、そう。それな。まぁ元々近寄りがたいって思われがちなんだけど、真下と一緒にいるの見かけるようになってから余計笑わなくなってな、ちょっと心配してたんだ」 ………ん？ 「先に聞いていいですか？ シノギダ先輩は清瀬先輩の、友達？ですか？」 「友達、っつーか、まぁ幼なじみ的な。小学校から一緒なんだよ」 なんだ。そうなんだ。 けど。 「でも、好きは好きなんですよね？」 「おいおい。いくら清瀬が綺麗だからって、俺は女が好きなんだぜ？」 「あっそうですか」 カッコつけるな。 「でも俺とじゃ釣り合わないって言った時、めちゃめちゃ強く同意しましたよね？」 「だって、綺麗なものの隣には綺麗なものを置きたいじゃないか！」 「うわ、クソ失礼」 「あっ、すまん。決してよろずやが汚いと言ってるわけじゃないんだ」 「ボロ出すだけなんでもう黙っててください」 「…すまん…」 でかい図体でしゅんとするな。 思わずため息をつくと、先輩は大きな体をびくりと揺らした。 「それで？ 心配しててどうしたんですか？」 先を促すと、先輩はハッとしたように顔を上げた。 「そう、それで清瀬に聞いたら、真下と付き合ってるって言われて、しかも日替わりで！ あり得ないだろ、あんな、綺麗なだけじゃなくて優しくていいやつなのに！」 「まぁそれは全面的に同意です」 「だろォ！？」 もう絡み方が酔っぱらいのそれなんだけど。 「別れた方がいいんじゃねぇのかなー、と思ってたんだけどさぁ、清瀬は真下のこと好きだって言うし…やるせなさでモヤモヤしてて…。そしたら急に知らないやつと帰ってた、って噂になってさー、もうさぁ、分かるかぁ？ 俺の気持ち」 「グダグダ過ぎて何一つとして分かんないっす」 「分かれよ！ そこはひとつでも分かれよ！」 「っつぅか、俺じゃなくて清瀬先輩には何か聞いたんですか？」 どこの誰とも知らないやつを探し当てるより、身近な本人に聞いた方が早いじゃん。 「聞いたよ。聞いたから待ってたんだろ、よろずやを」 ふぅん…？ 「清瀬先輩だって同じこと言ったでしょ？ 俺は真下先輩の中学からの後輩です。清瀬先輩とは直接知り合いとか、そういうんじゃないですよ」 「うん。でも清瀬がよろずやのこと褒めるから、気になって。付き合ってんのか？って」