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第18話
俺は清瀬先輩にショートメールを送って、ハンカチのお礼と返したい旨を伝えた。先輩からはすぐに返事が返ってきて、駅で待ち合わせることになった。
この電話番号も、いずれは消さないといけない。
俺が知ってていいものじゃない。
「……」
それでも切なくなってしまう俺は、きっと人恋しいからだ。
他に目を向ければきっと、こんな風に清瀬先輩のことで悩まなくなるはずだから。
大体、一回会っただけで気になるとか、俺は先輩の何を知ってるって言うんだ。綺麗すぎる人だから、今まで有ったことのないような人だから、気になってるだけ。身の丈に合った幸せを見つければ、きっとすぐに忘れるだろう。
だから、これでいい。
それに、
「あ、そうだ、自転車屋さんから修理終わったって電話あったから、早めに受け取りに行ってきなさいね」
「ほんと? じゃあ今から取り行ってくるわ」
「そうね、まだそんなに暗くないし。すぐそこだものね」
電車を使う理由は、今日でおしまい。
明日からは、直った自転車に乗って学校へ行く。駅を利用することもないから、あの道を一緒に歩くこともない。
やっぱり胸はちくりと痛んだけど、これは恋ではないと、自分に言い聞かせた。
翌朝俺は、自転車に乗って駅へ向かっていた。
真下先輩と顔を合わせなくなったのはよかったかも知れない。
先輩があんな気まぐれなことしなければ、って八つ当たりしそうだったし。
駅の階段を下りた所で、清瀬先輩を待つ。多分そろそろ電車が着く頃。
スマホを眺めながら待っていると、改札の方からぞろぞろと人が出てくるのが見えた。同じ学校の制服もちらほら。
清瀬先輩ほどの美人とシノギダ先輩ほどの大男なら、見逃すはずもないから大丈夫だと思うけど……向こうに埋没し過ぎる俺を見つけてもらえない可能性は大いにあるな…。
若干不安になりながら待っていると、昨日の大男の姿が見えた。他の人より背が高いから、めちゃめちゃ見つけやすい。
手を振って合図をすると、シノギダ先輩は俺に気づいたようで隣に何か話しかけているみたいだった。
「万谷くん、おはよう。待っててもらってごめんね」
光を振り撒きながら、清瀬先輩が駆けてくる。比喩でも幻覚でもなく、ほんとに光を振り撒きながら駆けてくるんです。俺にはそう見える。
「おはようございます。こっちこそ、朝からすみません。シノギダ先輩も、おはようございます」
「うん、おはよう」
シノギダ先輩の目が、何の用だ、と言っている。
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