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第20話

「………万亀にしては難しいこと言ってると思うから、とりあえず考えていい?」 「うん。俺も俺にしては難しいこと言ってるな、って思ってた」 思ってたんかい。 「でもさぁ、ほしいのに『身の丈に合わない』って決めつけちゃうのはダメだと思うよー? だって意外と手に入るものかもしれないじゃん」 「……うん」 うん。分かんないけど分かった。 「あ、あとさ、比較してみればいいんじゃない?」 「比較?」 「そうそう。ほしいものと似てるもの?とか、比べてみて、それでもやっぱり欲しい!ってなったら本物だよ、多分」 似てるもの、って言われても…。 「俺のねーちゃんがさ、よくやってんの。欲しい服があって、でもちょっと高くて、似た感じの安い服で満足できるかどうか。満足できたらそれでいいし、満足できなかったらそれは思い切って手を出す、って言ってたよ。けど何か分かるんだよね。服じゃなくてもさ、他でまぁいいかって思えるならそれでいいけど、絶対あれじゃないとダメだ!って思ったら、やっぱり手を伸ばすべきだよ」 「…絶対、か」 絶対 先輩じゃないとダメかなんて、分からない。だって比較対象がないし。 「ってかさー、明日の他校の子に会うやつね」 「あぁ、あれ?」 「どうやらすごい可愛い子が来るらしい」 真顔。 「………すごい可愛い子ってさぁ、そんなとこ来なくても彼氏出来んじゃん?」 「俺もそう思うよ? けどちょっと期待しちゃわない?」 「うん、まぁ…」 すごい可愛い子を見れば、俺はそっちに惹かれたりするんだろうか。 何か、なぁ…。 いや、でも…。笑顔ひとつでころっと惹かれてしまう単純すぎる俺なら、すごい可愛い子の笑顔にもころっと惹かれてしまうかも知れないし。それはそれで問題だけどな。 「ねー、ちょっと万谷ぁ」 そこへ、ひどく不機嫌な俺を呼ぶ声。見れば、同じ週番の田中さん。 「え、何?」 「何じゃなくてぇ! 何で今日 日誌取り行ってないのぉ? 担任に呼ばれたんだけどぉ」 「っつーかさ、昨日まで毎朝俺が取り行って、毎日俺が書いて、毎日提出してんだけど。それについてはどう思ってんの?」 「ど…どうって…そ、そんなの仕方ないじゃん! 万谷の方が早く来るんだし、放課後だって用事ないでしょ!?」 「勝手」 「っな、…」 「まーいいよ。今日も俺が書いて俺が出しとくから。はい、受け取りどーもね」 日誌を田中さんの手から抜いて何気なく周りを見ると、特に男子がニヤニヤしていた。これくらい言っても許されるでしょ?

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