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第21話

「んだよ、どーせ彼女もいないし暇でしょ? 暇なら日誌出すくらい別にどーってことないじゃん」 「はいはい、毎日 彼氏と会うから忙しいんだもんねー。これで満足?」 「…っっ、ムッカつく!」 「ガキかよ」 「ちょっと千景、煽りすぎでしょ」 万亀が苦笑いで俺を止める。 ギャンギャンうるさいのは苦手なの。 「田中さんもさー、週番の仕事全然しないから言われるんだと思うよ? 休み時間ずっとスマホいじったりしゃべったりしてるだけじゃん? 千景が一人でやってんの、俺とか他の男子が手伝ってるの見てるでしょ?」 「はぁ? 知らねーし! っつか、週番くらいでいちいちウザ!」 おい、てめぇ。クソギャル。 「週番くらいでいちいちうぜぇとか言うならハナから日誌ひとつでうだうだ言ってんじゃねぇよ。ない頭絞って喋りやがれ」 「千景くーん。千景くんそこでストップしよっかー」 万亀が本格的に止めに入った。仕方ない。黙ってやろう。 「はぁ!? マジ何なの!?」 「うるせぇっつーの。その頭の悪さでよくここ入れたね」 「千景くーん!!」 はーい。黙りまぁす。 マジ万谷ムカつく!!って女子の集団に突っ込んでいく田中さん。 慰める女子がいる中、ひとつもやらないあんたが悪いでしょ、ってグループのボスである広尾さんが一蹴してた。さすがボス。 広尾さんもギャルだけど、一本筋の通ったギャルだから嫌いじゃない。 日誌を開いて今日の日付を入れる。 授業内容もどうせ変更ないだろうからと書き入れていると、予鈴が鳴った。 授業始まるなぁ、なんて思って、なぜかふと浮かんだのは、駅で見た淋しそうな清瀬先輩の顔だった。 そもそも俺は、小さい頃からあまり欲のない子、なんて言われてきた。 大学生の兄がいるけど、ほとんど兄のお下がりで全然文句もなかったし、あれが欲しいこれが欲しいで泣いて駄々をこねた記憶もない。 道具は使えればいいと思ってるからデザインとかもどうでもいいし、センスとか分からんからいまだに服は兄のお下がりで充分だし。 そんなに強く惹かれた物とかが、これまであんまりなかった。 ニャンテンドースイッチは、万亀と通信して遊ぼう!ってなったからバイトして買ったけど。そういう特別な目的とかがなければ、特段何かが欲しいって思ったことはない。 思い出して、胸が引き攣るような経験をしたことが、ない。 だから先輩のことを思い出して胸が痛むこれが、本物なのかどうなのか、今の自分では分からない。

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